航空母艦飛龍 第一章 第1話 |
作者: るる 2008年07月03日(木) 17時00分18秒公開 ID:ZSZLTFfG6BI |
第1話 名刺を見て、名前を確かめる。鳳 雅彦と書いてあり、その下には名前の大きさと対照的に小さい文字で「飛龍 指揮官」と書いてあった。鳳さんは、飛龍の指揮官ということは船長もいるのか? 名刺をポケットに丁寧に入れた。俺の名刺も渡さないといけないとおもい、ぱっと渡した。 「…ありがとう」 「なぜ、さっき、驚いたんですか?」 鳳さんは鼻先にずれ落ちた眼鏡を元にもどすように中指でくいっと元の位置に戻した。カチャとまた金属のようなものがあたる音がする。そういえば銃弾が二つ落ちたはずだ。俺は反射的に銃弾を探そうとした、がしかし、鳳さんは手を俺の目の前に置き、「後で自分が探す」と耳に残らないような声で呟いた。 「……君の足のはやさに驚いた」 と、前置きをして 「君は、陸上選手だったのかい?」 鳳さんは俺に質問した。 もう、14年くらい前のことだな……、陸上部に入ったけど、友人や知人が全くいなく、俺1人だったから次の年は入らなかった。寂しかったのを今でも覚えている…。 「なぜ、俺を呼んだんですか?」 コーヒーでも少し零したような薄い茶色いシミが右角にちょこんとついている写真をすうっと見せた。その写真の下には何やら記号のような文字が書いてあり、右横には空と書いてあった。何をしめしているのか、何を示すのか全然分からない。 写真の人物を見ると、長い髪の金髪の少女で海のような深く濃い色をした部分もあれば、夜明けの空のように薄い青色もあった。 「石川スズという……。どこかで見かけたりしなかったか?」 スズさんという人はどこかに旅に出ているのか?それとも、行方不明なのか? 「…見たこと無いですね……。娘さんですか?」 鳳さんはこくりとうなずいた。 鳳さんの黒髪とスズさんの金髪はとても親子とは思えない。もしや、目の色が同じなのか…?鳳さんが顔を上げる一瞬だけ顔の一部の目を見た。 心臓がどくんと跳ね上がるのを体で感じた。左目が白くなって失眼している。右目はまるで炎のような赤色。全く似ていない……、スズさんは母親似ということがなんとなく分かった(多分)。 「……ああ」 強い風が吹き、髪が乱れた。 鳳さんはしゃがみこみ、落とした銃弾をまるで落ちた場所が分かったようにすいすいと拾う。 「では――」 もう一言つけようとしたとき、鳳さんは飛龍に戻った。もう一度風が吹く。 1話完 |
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