Sweet * Cute * Love |
作者: 一夜 2008年07月26日(土) 17時55分31秒公開 ID:5EwBxlXyk0. |
中学生最後の春…―――。 新しいクラスの扉をくぐり、黒板に書かれたとおりの席に座った。 すると、 「なぁっ…ケー番とメアド、交換しねぇ?」 隣の席の田渕健悟(タブチケンゴ)がいきなり街で女の子をナンパするかのように声をかけてきた。 彼は青色のケータイに付いたストラップに指をかけてぶらぶらと揺らしている。 その時、開いた窓からぶわっと風が吹いて彼の髪が優しく靡いた。 ……人懐っこい笑顔で、私のことを見ていた。 (長い前髪のせいで見えなかったけど、こんなふうに笑うんだ。) 思わず、見惚れてしまった。 「おーい?」 彼の笑顔に見惚れていて我を忘れていたらしい。彼は私の顔の前で手をひらひらと振っていた。 「え、あ、…うん。……良いよ。」 多分、これが一目惚れっていうヤツ。 今日……私、月島奈緒(ツキシマナオ)は田渕健悟くんに恋をしました。 プルルルル…プルルルル…。 呼び出しのコールが耳の中で響き渡った。 私は、汗ばんだ手で淡いピンク色のケータイを持つ手にぎゅっと力を入れた。 健悟くんに恋をしたあの日から2ヶ月が経った。想いを伝えようと何度も思って、今日伝えることにした。 でも、自分がこんなにも…優柔不断だと思ってなかった。 この想いを電話で伝えるかメールで伝えるか…1時間23分も悩んでいた。 (あぁ…時間の無駄だった…。私の優柔不断ッ!!) ほんの少し自己嫌悪に陥っていると、呼び出しのコールがプツリと切れた。そして、 『もしもーし、月島ー?』 健悟くんの声を聞くだけでどきっと胸が高鳴る。…そっか、いつの間にかこんなにも好きになっていたんだ。 『?…おーい?』 1人でぼぉーっとしていて我を忘れてしまっていた。…あの日と同じように健悟くんの声で我にかえった。 「う?あ、ごめん!」 『いや、良いよ?それより…急に電話なんてどしたの?』 するとまた、どきっと胸が高鳴った。そうだ私、想いを伝えなきゃ…! 「あ、あの…あのねっ!」 『うん?』 私は1回だけ小さく深呼吸をして言葉を続けた。 「……あの、えっと…健悟くんが私にケー番とメアド交換した日、覚えてる…?」 『うん、覚えてる。』 ごめんね。もしかしたら、迷惑かもしれない。だけど、伝えたいんだ。 だから……言わせてください。私の、想い。 「私、あの日から…健悟くんのこと、が好き…です。」 言えた。伝えることが出来た。するといきなり、瞳からぽつっと一粒の涙が零れ落ちた。 あれ?まだ何も言われていないのに、なんで?…緊張の糸が切れちゃったのかな? 『…月島、あのさ…俺も好き、だよ。』 その言葉で私の思考回路がぴたりと止まった。 え?健悟くんも私のことを……? 『2年生の冬頃から、好きだったんだ。気付かなかった?』 「気付かなかったって、そんな…分かんないよ?」 ケータイ越しから彼がくすくすと笑う声が聞こえた。 『分かるって。…好きじゃなかったら、ケー番とメアド交換しようなんて言わなかったし。』 …そうだ。確かに健悟くんは、女子に良く交換しようって言われて交換するけど、自分から交換しようって言ってない…。 『な?分かるだろ?』 「……うん。」 『もしかして…泣いてる?』 そう、泣いてる。泣いてるよ…あまりにも嬉しくって泣いてるの。 『ははっ…お前みたいな泣き虫、俺じゃなきゃ守ってやれねぇじゃん。』 捻くれた口調の、優しい言葉。 健悟くんの言葉を聞くたびに…涙は溢れてくる。 『ってなわけで?……俺と付き合ってください。』 「……はい!」 始まりは、君からの言葉。 “なぁっ…ケー番とメアド、交換しねぇ?” |
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