雨音
作者: 神凪由華  [Home]   2008年08月02日(土) 11時24分57秒公開   ID:J815t/uVAkQ






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これは、何の音だろう?


ノイズ混じりに聞こえる音。


・・・雨の音?


そうだ、雨の音だ。


大好きで、大嫌いな雨・・・・―――――







それは、私がまだ5歳の時。
雨の日で、傘をさしながらいつも通り、家に帰ってきた。
そしたら、部屋は真っ赤だった・・・
そして、その赤の中心に私の両親が寝ころんでいて

・・・虚ろな瞳だった・・・

でも、叫ばなかった。
涙も出さなかった。
何故って?
・・・分かっていたから
きっと、いつかこうなるって・・・
分かっていたから。
でも、きっと心の中では泣いていた
私も気付かないくらいの心の奥底で、泣いていた。
雨の音は、まるで私の代わりに泣いているようで
少し、笑えた。

私は行くあてもなく、親のお金を持って家を出た。
あのあと、部屋はどうなったんだろう?
お家はどうなったんだろう?
そんなくだらない事を思いながら、彷徨った。

・・・雨が、私の服をびしょびしょにして。

孤独感がより一層増した。

それでも、歩き続けた。
意味はないけど。
途中で傘はめんどくさくて捨てた。
・・・5歳の女の子が傘もささずに夜の街をふらつくなんて、きっと私ぐらいだろう。
途中で、大人に声を掛けられても
無視して
睨んで
逃げて。
あはは、あたしって不良みたい。
警察にも声をかけられたけど、人ごみに紛れて逃げたっけ。
・・・何がしたかったのか分からないけど
とりあえず走ったり、歩いたり。
そのうち夜が明けて、朝が来て、また夜になって、また朝が来て。
くりかえし、くりかえし。
そのうち、自分の名前も忘れて
住んでたところも忘れて。
ただ、自分にあったのは
1つのオルゴール。
・・・誰に買ってもらったか忘れたけど、家をでる前に持ってきたんだと思う。
綺麗なガラスの装飾が施された箱で、あけるとメロディーが流れる。
何の曲なのか忘れたけど
これだけが、私に残されたものだった。

〜・・・♪・・・♪〜
だんだん音がゆっくりになって、音が小さくなって、
私はもう一度ねじを巻こうとした。
・・・が、曲が止まった瞬間、その人は現れた。



「・・・こんにちわ。」

気配などなく、いきなり現れたような感じ。
歳が私と同じくらいの、銀髪の少女だった。
が、驚いたのはその瞳。
少女の瞳は、片方が紅く、片方が蒼かったのだ。
猫などで、たまにこうゆうのは居るが・・・
人間では初めて見たので、かなりの衝撃だった。

「・・・あ・・・あなた・・・誰・・・?」
「・・・私は・・・そうだね・・・零とでも言っておこうか。」
「・・・零・・・」
「そう。零。この世に存在しない筈の存在。」

少女は笑う。
私は笑わない。
雨が降ってきた。
でも今はそれどころじゃなかった。

・・・この世に存在しない筈の存在・・・・?

そんなの・・・

「貴方は、選ばれたんだよ。」
「・・・?」

何を言っているんだろう。
何故か、ノイズが混じる。
目の前の世界が・・・歪んで見える・・・

「・・・アリス。貴方はアリス。
・・・私の力に選ばれた、存在。」
「あ・・・りす・・・?」
「そう。アリス。貴方の、新しい・・・名前。」

少女は微笑むと、あろうことか自分の蒼い瞳を自分の手で抉り出した。

「ひ・・・ひぃっ・・・!!」

その光景に、私は思わず声をあげてしまった。
だって、自分の眼、だよ・・・・?
雨の音が、抉る音とシンクロして、とても嫌だ。

「大丈夫。怖がらないで・・・貴方に・・・アリスに『力』を分けるだけだから・」
「い・・・嫌・・・っ!嫌っ!!」

後ろに下がろうとして、ずてっと転んだ。
あぁ・・・そういえばここ、公園だっけ。
私、ブランコにのってたんだっけ。
・・・少女は、抉り出した瞳を持ってこっちに来る。

「大丈夫、だよ・・・・。」

雨の音が響く。
うるさい、うるさい、うるさい、うるさい、うるさい!!

「嫌・・・嫌ああああああああああああああっ!!!!!」






それから、覚えてない。
起きたら、誰かの部屋だった。

「おはよう、アリス。」

そこには、昨日の少女がいた。
・・・眼はちゃんと両方ある。
・・・あ・・・あれ・・・?

「私の眼は魔力で治るから、大丈夫だよ。」
「ま・・・魔力・・・?」
「そう、魔力。・・・試しに・・・そうだな、そこにある貴方のオルゴール。それを宙にうかべてごらん。
・・・宙に浮くイメージをすると、できるから。」

・・・?
とりあえ、やってみると、オルゴールは宙に浮いた。

「うわっ・・・・ほ、ホントだ・・・。」
「・・・貴方は選ばれたのだから、当然だよ。
・・・改めて本当の名前を言うね。
私の名前は李亜・・・いや、魅亜(みあ)。私の名前は、魅亜。別の世に生きるべき存在。
そして、貴方はアリス。別の世に生まれるべき存在で、選ばれた人間。」

少女・・・いや、魅亜が微笑む。いや、正しくは・・・不吉に笑う。

「コレカラ・・・ヨロシクネ?」

















そうして、私の世界は暗転する。




end・・・・・
■作者からのメッセージ
掲示板・ほのぼの陽気にて現在も更新中のリレー小説
MOON*CROSS〜UNION〜
から、魅亜(紅)とアリスのお話です。
まぁこれは設定が見えなくても読める話ですが・・・・

ダーク系、大好きなので書きました。
いかがでしょうか?
感想いただければ嬉しいです。


作業のお供・・・かき氷
作業時のBGM・・・【東方】オーエンアレンジメドレー【多分作業用BGM】←ニコ動から
作業時の状況・・・朝・眠い

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