君と僕の傷痕。 |
作者: ゜.+エル+.゜ 2008年10月28日(火) 12時03分13秒公開 ID:CbpH57ulev2 |
どこかで歌が聴こえたような、気がした。 どこかで誰かが泣いている、ような気がした。 僕は宵闇の中で、月の光にその白い肌を照らされた君を見ることができずに、 君を照らす月を眺めていた。 そして、「僕は今、この満月みたいだ」と思った。 満ちているけれど、所々に欠けた――… 傷が在る。 そうだ、足りないんだ、何かが。 ...君が。 抱きしめられる距離にいて、今さっきそれ以上の事もして。 なのに僕は、眠る君をこれ以上...触れて、君に僕の痕をつけられない。 君は娼婦。僕は元鑑賞奴隷。 こんな事... 一夜の情事など何十回して慣れていて、 なんともない、筈なのに。 でも、君は違う。 僕が今まで相手をしてきたどの女よりも美しくて、儚くて、 深い傷がある。 僕が触れる度、その傷は痛む。 その傷痕は、君が今でも心の片隅で想う人のモノであると、 僕は知っていた。 ――19世紀 …英国 とある上流階級...シャーロット伯爵邸 広い屋敷の中を1人の愛らしい少女が駆ける。 少女はあるメイドを探している。 「アネリアー!お買い物いきたいっ」 「まぁ、カレンお嬢様、ピアノのレッスン中なのでは?」 「だって、アネリアと一緒にいたいの」 「アネリア、ちょっと ・・・あら」 「奥様! あの、、」 「お母様、アネリアと一緒にお買い物に行っても良い?」 「そうね、いいわ。 本当にカレンはアネリアが好きね」 「うん!アネリア大好きっ」 「ありがとうございます、奥様、カレンお嬢様」 アネリアは下級階級の生まれだが、気品があり、優しいメイドだった。 |
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