BLADE OF SWORD 第十夜
作者: 清嵐青梨   2009年05月09日(土) 23時08分06秒公開   ID:L6pfEASBmTs
此処が柳洞寺か…、抱えた俺を石段の上で下ろすと一段ずつ上り乍らランサーはじろじろと木々に囲まれた場所を見回しぽつりと呟く。物珍しそうに回りを見回し乍ら石段を上っている男に、此奴…此処に来るのが初めてなのかとその様子を見て思った俺は、一寸ずつ遠ざかっているその後ろを追いかける。




「お前…冬木町の地理知らないのかよ」

「学校とやらに来たのは二度目だけどな」

「……他は?」

「知らねー家とかでっかい橋とか召還された場所ぐらいしか…」

「駄犬だな、お前。」




黙って此奴の話を聞いて思わずズバッと切り捨てたその台詞に、はぁ?とランサーが振り向いて俺を見下ろし素っ頓狂な声を上げる。

自分が何故駄犬と罵らなければいけないのか分からないらしい、俺は長い溜め息を吐くと彼を追い越してその上を上ると水平な石段の上で立ち止まり、今度は彼を見下ろすと聞こえなかったのか?駄犬って言ったんだよ、ともう一度繰り返した。




「お前な…召還されたなら先ずするべきなのは冬木町の地理を知ることだろうが。何処の野良犬なんだよお前……あ、俺が飼っているのは犬じゃなくて猫だった」

「てめぇ…仕方ねーだろう、俺のマスターは勝手すぎる奴でね…ユウにも同じこと言われたことあったんだよ」
「同じこと…深追いはするなっていうこと?なんだ、お前のマスターにも言われたのか」
「言われたっつーか、命令でね。……ところでお前さん、令呪は使ったことあるのか?」




それは…とランサーに向けて言いかけた時頭上から、遅かったではないかユウ、と聞き覚えのある声が俺に向けて言う台詞が聞こえた。振り向くと何時もの様に門番をしていたアサシンが俺を通り越して後ろにいるランサーに視線を投じていた。

彼に視線を向けたまま門から離れ一段一段と石段を下りていき、其処でようやく俺に視線を向け近寄ると、怪我しているぞ…と既に血が止まっている頬の傷を撫でる。
其処で俺はそっと撫でている手を握り返し、一人でバーサーカーと戦ったこと、ピンチの時にランサーが助けて呉れた経緯を一通りアサシンに話すと、ほぉ…と感心の一言を呟き再びランサーを見ると、我がマスターを救って呉れたこと…本当に感謝するぞ、と言った。


その言葉を聞いた本人はそっぽ向いてアサシンから目を逸らし、俺ァ別に助けた覚えはねーよ…と言った。




「只俺のものに手を出す奴は問答無用で殺る…そう決まったんだからよ」

「だから何時お前のものになった、」
「そうカッかになるなユウ。それでユウを態々柳洞寺まで送った……だけではあるまいな」
「まぁな、てめぇの剣の腕はどの程度なのか」




是非試して見せましょうかな、と何もないところから先ほどの紅い槍を出し切っ先を真っ直ぐアサシンに向ける。紅い目が再びギラギラと輝いていて明らかに殺る気充分の様子だ。

何も力量を量るために槍を出さなくても良いのでは…そう思ったのだがアサシンはその勝負を受けてたつのか、背中に背負っている刀に触れスゥ…と刀を抜刀し鞘に括りつけた紐を解くと、鞘を持ってて呉れ、と言われ俺は有無を言わないまま彼の鞘を持つ。

正直に思うと本当にランサーに勝てるのか分からない、先ほどのアーチャーとの戦いの一部始終を見て、互角に戦っているように見えたが明らかに戦闘経験はランサーの方が一枚上手である。そんな相手に勝てるのだろうか…。
そう考えていると余計に心配してしまった、ギュッと預かった鞘を掴むと安全のため先に石段を上り門前で止まり一騎打ちの様子を見ようと振り向こうとした。




その時だった、振り向く前にガキィンッと金属音がぶつかり合う音が聞こえた。もう始まったのか…俺は思わず振り向くと視界に映ったのは宙に舞う様にランサーの手から離れていく槍と、彼の背後にいたアサシンの後ろ姿のみだった。

彼は茫然とした表情で己の手から離れ水平な石段の上でカラン…と乾いた音をたてた槍を見下ろす。一方のアサシンはぽつりと、呆気ない…と一言呟き刀をヒュッと風切り音を出す。


彼は痺れを感じている右手を一瞥しその手で顔の右半分を覆うと、参った…と一言呟くと覆っていたその手を離し、水平の石段の上で転がっている槍を拾う。
一瞬何が起きたのか検討もつかない俺は只茫然と二人を見下ろしていると、アサシンがそれに気付き俺を見て、槍で突かれる前に此方から突かれに来たのだよ、と言った。




「要は…槍を突く前に自分から槍の前に来て、槍を弾いたって事?」
「ユウならそう言うと思った…だが、ほぼ正解だな」
「ほぼ正解…?完全に正解じゃなくて」
「槍に突かれる前に懐に近寄って刀で弾いた…と言えば分かるかな」
「…まぁ、何となく分かる気がする」




戦闘術の解読には今一自信はないがアサシンが言った言葉をそのまま想像をしてみたら、言葉通り何となく分かった気がしたのでそのまま曖昧な返事をしたら、そりゃ一瞬だけしか見てねーからな、とランサーが槍を傍らへ引き寄せアサシンと俺を交互に見る。




「だけど本当に、一瞬にして終わっちまったな…そんなにお前さんのマスターの怪我が心配なのか?」

「早く手当てをしなければ化膿してしまう……だから勝負は迅速に終わらせるべきであろう」

「……別に、俺の怪我のことは心配しなくても良いのに」

「マスターは私の事よりも自分の事を気にしては如何かな、ユウは心配しなくても良いのだが逆に此方が心配だ」
「俺も同感だ、ユウはアサシンのマスター…んで俺の仮マスターだから自分の身体を大事にしなきゃ行けねーな」
「……なんか二人とも凄い真面目なこと言ってる気がするけど」




二人のサーヴァント同士による真面目な正論に言い訳が思いつかず、そのまま言葉に拠る押し負けに呆気なく負けてしまった俺は、二人の言うとおり先ずは自分の怪我を治すのが先決だなと思い、家から救急箱を取りに一旦柳洞寺の境内へ入り真っ直ぐ自宅へ向かった。
■作者からのメッセージ
※gdgdですみませんorz

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