BLADE OF SWORD 第十三夜 |
作者: 清嵐青梨 2009年05月14日(木) 17時11分03秒公開 ID:L6pfEASBmTs |
放課後、慎二との約束通りに彼の教室へ足早に向かう。本当なら凛に七人目のマスターとなった士郎を如何するか聞きたかったのだが、そのことを聞く前に彼女は早々と行ってしまい聞きそびれてしまった。 次回は絶対に聞いてやると明日のことをちゃんと視野に入れておいて覚えておくと、いざ件である慎二と士郎の教室へ向かった。 ガラッと教室の引き戸を開け茜色の日が差し込む教室に入るが、其処に慎二の姿は見当たらなかった。真逆態々呼び出しておいて自分だけ帰った、なんてことは彼には有り得るかもしれない。然し後ろの窓側に目をやると其処に一人の女性が立っていることに気付いた。 分厚いアイマスクを付けていて髪は足元にまで届く程度のとても長い髪で、かなり露出のある服を平気で着ている。 何故学校に女性が来ているんだ…。俺は教室の中に入るなり彼女のところへ恐る恐る近寄り、かなり距離が狭まったところで動きがあったのは彼女の方でアイマスクをしたまま此方を振り向いてきた。 アイマスクをしたままで自分が来たと良く分かったな…否、気配で気付いたかもしれないな――。そう思った俺は彼女に慎二の行方を聞こうとした時、きらりと彼女が手にしていたものが日光で光りだしたかと思いきや、持っていたそれで俺に向けて投げてきた。 行き成り迎撃してきたことに驚き、投げてきたそれを避けるが再び投げてきた武具に気付かず右腕を貫かれてしまった。思わず片膝を立て感じてくる痛みに耐え乍ら右腕を貫いたそれを掴み抜こうとしたら、驚かないんですね…貴方は、と女性が俺を見下す。 「私の杭に右腕を貫かれても苦痛に耐える精神は立派ですが、何故私の迎撃に驚かなかったのです?」 「アイマスクをして露出の高い服を着る教師がいるものか……俺はまだ騎乗兵《ライダー》に会ったことがないんでね」 「…聖杯戦争の参加者ですね、貴方は。如何です、此処で命は見逃してあげても構いませんが、その前に貴方のサーヴァントと令呪を頂いても」 「それは断る。生憎俺にだって叶いたい願いがあるものでね、そいつは無理だな」 「…そうですか…それは此方にとっては残念ですが仕方ありませんね」 そう言うなり彼女――ライダーはジャリ…と鎖杭を構え持ち片方の手で俺の髪を掴んで乱暴に床へ叩き伏せられ、鎖杭の切っ先を喉許へと突きつける。 これは絶対にピンチってところか…俺はチッと心の中で舌打ちし令呪で柳洞寺の門番をしているアサシンを呼ぼうとしたが、其処でふとアサシンのほかにもう一人のサーヴァントのことを思い出す。 偽臣の書を持ったことはないがそれなしでもちゃんと彼奴を呼び出せることが出来るかどうか…一瞬の賭けだと思って俺は目を閉じて脳裏に浮かんできた彼奴を思い浮かび、心の中で彼奴の名を呼ぶ。 ライダーはそれを死の覚悟だと認識したのか、顔色一つ変わらず喉許に突きつけた鎖杭を振り上げて喉笛を引き裂こうとした時、外から近寄ってくる気配に気付いたのか彼女は振り下ろそうとした腕を止め窓の向こうを見ると、髪を掴んでいた手を離し俺から早々と姿を消した。 他のサーヴァントの気配を感じ撤退を決意したに違いない、俺は額に出来た傷を抑え乍ら身体を起こしまだ貫かれたままの鎖杭を抜こうとしたがびくともしない。このまま放っておけば傷口が腫れて取り返しのつかないことになってしまう。 如何したものか…はぁーっと長い溜め息を吐いたら、如何した?その傷、ライダーにやられたのか?と先ほど呼び出したサーヴァントが俺の横に近寄り、右腕を貫いている鎖杭を持って力いっぱいにそれを抜いた。 傷口からほんの数量の血が流れたが大した傷ではないから済んだものの、それでもやはり痛い。 「直ぐ治療してやる、包帯が何処にあるか案内して呉れ」 「人遣い荒いなぁ本当…仮マスターだぞ俺」 「仮マスターでも俺のものだと言ったろう」 だからてめぇの扱いも俺の自由だ、とランサーは俺を立たせて手に持っている鎖杭を離し俺と共に教室から出る。 放課後の学校は確かに誰もいないが若し誰か人がいたら一大事に過ぎん。俺は階段を下りたところで霊体化して呉れないかと彼に命令するが逆に何故だと行き成り問い出されたのには正直たじろいだ。 若しマスターやサーヴァント以外の誰かがお前を見たら絶対に通報されるだろう、という説得を試みると、彼は霊体化がそんなに嫌なのだろうか非常に嫌そうな表情をするもその命令には逆らえず素直に霊体になり気配を隠す。 マスターに何度も霊体化するよう散々命令されたのだろうか…生憎と未だ彼のマスターに顔を合わす機会がない以上此処は彼に我慢というものを覚えさせなくてはいけないらしい。なんだかんだと言って此奴は本当に獣属性が強すぎる。 「大丈夫だって、着いたら霊体化を解かせてやるからそれまで我慢しろよな」 『へいへい、了解しましたよ』 「…お前、なんか不貞腐れてないか?」 『あぁん?そりゃ気のせいだろう』 そう言ってランサーは其処で黙ってしまった、今のマスターに相当ご不満を感じているようだ。 保健室に着いたら絶対に霊体化を解いてやろう…そう誓って階段を下りている最中、ちらりと怪我した右腕を見ると血は止まっていて傷口はほぼ塞がっている状態だった。 サーヴァントに治癒能力があると聞いたが真逆此処まで回復するとは思っても見なかった…然しこのことは誰にも言わないでおこうと思い留まった俺だったが、うっかり段差を踏み外してしまい階段から滑り落ちそうになった。 慌てて手摺りにしがみ付いたのは良かったが、代わりにランサーが霊体のまま声を押し殺して笑いを堪えている声が聞こえた。 |
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