恋人たちの夜想曲 |
作者: なぁび 2009年05月18日(月) 20時00分01秒公開 ID:5/1zPIXWuTs |
世間では今日はクリスマス。みんな恋人と過ごしたり、友達とパーティーを開いたり…楽しく楽しく聖夜は更けてゆくのです。 窓が曇るほど、私は窓に顔を押し付け、昨日からやまない雪を見ていた。 ――今日は、疲れたなぁ――…。 私の家は教会、だから1年でいちばんクリスマスが忙しいのです。 それは物心ついた時から毎年そうだったからそれは別に何とも思わない。ましてや、誰かと一緒に過ごしたいだなんて、思ったこと――…。 思ったけど、無理なんだもの 家族はもうとっくにいなくて、気付けば私は一人だった。 お母さんは物心つく前に出て行っちゃったし、お父さんはついこの間…事故で…私よりも先に逝ってしまっただけ。ただそれだけ。 だから――…もういいの。今年も、こうやってお父さんのお墓の前で過ごす。 こうすれば、ちょっとだけだけど、寂しさがまぎれる気がして。 「雪、止まないなぁ…」 はぁ、と吐く息が白く昇天していって…何かを私の中につのらせてゆく。 寒いなぁ。早く、春にならないかなぁ。 春になって、暖かくなって、それだけでもたぶん気がまぎれるかもね。 ――そう、それだけでいいの。 私の家は、貧乏です。 それは、むしろ嫌じゃなくって、誇りだよ、私にとってはね。 なんの取り柄もない私を好きになってくれる人はいた。 私もいつの頃からか好きだった。 小さな恋心。温めて温めて、やっと実った恋。 嬉しかったんだよ。こんな私を好きになってくれて。 それだけで、私は幸せだよ。だから、今も心はポカポカ。 ありがとう |
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