BLADE OF SWORD 第十七夜 |
作者: 清嵐青梨 2009年05月20日(水) 04時18分17秒公開 ID:L6pfEASBmTs |
その後凛の中華と桜の和食といういかにもどちらかが料理の腕が上かという豪勢な晩御飯になったが、それでも俺は何度目の御飯のお代わりか分からないセイバーに負けないくらい鱈腹食べた。 その後食後のデザートである羊羹を食した後俺は直ぐにでも柳洞寺に帰るため衛宮邸を後にし、バーサーカー組と鉢合わせにならぬようかなり警戒心を鋭くさせ乍ら柳洞寺へ向かった。 其処で記憶が途切れたのだ、途切れる前の記憶を辿っていくと柳洞寺に着いて丁度石段を懸命に上っている途中木々の何処かでサーヴァントの気配を感じ取った。 アサシンがいる山門まで未だ先にあるのだが、此処は迎え撃つしかないなという結論に至り、いつでも迎え撃つように投影魔術を使おうとしたところを狙ってサーヴァントが俺の後ろを取られた。 それを後から気付いて振り向こうとしたところを狙って、後ろから俺の後頭部を殴りつけられたのを覚えているだけで丁度此処で気を失い視界が暗転された。 そして後頭部を殴りつけられた痛みと両腕と両足から感じる全く別の痛みを感じ、其処でようやく覚醒した。 倒れた場所である石段とは打って変わって丁度石段が見える深い木々の中のうち、二本の杉の木の間に移されたようだ。然し後頭部の痛みの他に感じてくる両腕と両足の痛みはなんだと疑問に思い、ちらりと右腕を見る。 右腕には一本の杭が深々と突き刺さっていた、その杭に繋がれている鎖を目で辿ると鎖は杉の木に結ばれていた。左腕も同じ様に鎖に結ばれ杭で突き刺さっているのだが足は…恐らく地面に突き刺しているに違いない。 ライダーの仕業だな…思わず苦笑して分かった、一難去ってまた一難とは正しくこのことに使われるよなと…。 俺は自分で抜こうにも両腕が拘束されて身動きが取れないまま、却説如何しようか悩んでいると石段の向こうから感じた覚えのある気配――セイバーの気配が此方へ向かってくるのを捉えた。 マスターである士郎を引き連れていないまま単独で柳洞寺へ向かうとは…流石騎士だな、と褒めたのも束の間彼女が何故単独で柳洞寺へ向かう目的は“キャスターを撃つこと”だということに気付いた俺はなんとしても縛られている杭を抜く方法を考えようとしたが、その前にセイバーの武装した姿が視界に映り俺に気付くことなく石段を駆け上って行った。 折角の好機なのだが彼女を呼び止める前に若しかしたらライダーが俺を監視している可能性も有り得ると思い、声をあげようとした言葉を飲み込んでセイバーが石段を駆け上って行くのを見送った。 凝乎と好機の希望である青色の女騎士を見送った俺は飲み込んでいた息をはぁっと一気に吐き出すと同時に口角を吊り上げる。 「情けねぇ…女に助けを求めるなんて、未だ未だ未熟だなぁ。俺」 本当…笑っちまうよな…。俯いたままクックッと笑っていると急に目の前が影り出したかと思いきや頭上から、またライダーの杭にやられちまったのかよ、と聞き覚えのある声が降りかかってきた。 俺は顔を上げずに、煩瑣い、ランサーの馬鹿…と目の前にいるサーヴァントに向けてぽつりと返すが彼は俺の言葉を無視してしゃがみ込んで俺の顔を覗き込むなり、本気で耐えてるのか…と聞いてきた。 耐えてる…それはライダーの杭に拠って突き刺さってしまった両腕両足の痛みのことだろう――俺は即座に理解しランサーの顔を見ると、平気…と一言返すが全然平気じゃねえだろうが、と俺の言葉を否定して左腕に突き刺さった杭を掴む。 「何やせ我慢なんかしてるんだよ、馬鹿が。セイバーを見つけたなら彼奴を呼ぶなり、令呪でアサシンを此処に呼ばせるなり幾等でも方法があったじゃねえか」 「令呪は俺がピンチになった時用にとっておいているだけ、セイバーを呼んだらアサシンと手合わせ出来なくなっちまう。只それだけだ」 「チッ、相変わらずお堅い奴だなてめぇは。…ま、そんな性格は嫌いじゃねーけどな」 そう言って左腕の杭を抜き取り地面に落とすと後ろに回り両足の杭を抜きにかかる。左腕だけってことは右腕は自分自身で抜け、ということだろう。俺は決死の覚悟で右腕の杭を掴むと渾身の力を左手に篭める。 杭は右腕から離れるわけにはいかんと言わんばかりに食いついていたが難なく抜け落ちる。杭の切っ先に僅かな血を制服の袖の上に一滴だけ落ちるとその杭を地面に落とし、止血しようと思い征服の上着を脱いで下に着ていた濃い灰色の長袖の袖部分を破り、細く破ると包帯代わりとして出来たそれを右腕に巻きつける。 時々ランサーが両足の杭を抜き取った後の微妙な痛みを感じるのだが其処は敢えて触れないでおいた。 ギュッときつく結び目を縛り終えた右腕の後に左腕の傷口を巻こうとしたところ、ランサーが一寸借りるぜ、と一言かけ左腕の袖部分を破り細く破くなり左足の傷口の手当てを開始する。 それを見てた俺は思わず手を止め、ふぅ…と小さく息を吐くと何で俺ばっかり構っていられるんだ?と止めていた手を再開し乍ら、いつも傷つく俺を構ってあげる理由を聞くと、何度も言ったろうが、と言うのだが何度も言っている俺のもの発言には流石に呆れたらしく彼は手短くはぁ…と息を吐き捨てる。 「お前な…自分を大切にしようと思わないのか?普通自分の命が優先順位じゃねえのかよ」 「確かに自分の命は大事さ。だけど…それでも、自分の命よりも矢っ張り他人の命の方が大切だと思うんだ。…自分の命よりも他人を優先する馬鹿姉貴と同じで」 「なんだ、ユウに姉なんかいたのかよ。意外だったぜ、んでそのお姉さんは今生きて……って、その表情を見りゃ分かるがな」 「心遣い感謝する…と言いたいんだけどね、今それどころじゃないみたいだな」 俺がぽつりと遠くにある柳洞寺の山門がある向こうを見てそう言った途端、行き成り木の葉が揺さぶり木々が悲鳴を上げ始めた。勿論その出所は柳洞寺の山門である。 山門で何かあったに違いない…その様子を確かめに立ち上がろうとしたがズキッと両足の痛みが鋭い悲鳴を上げ思わず顔が歪む。どうやら立つのがやっとのようだ。 チッと舌打ちしてなんとか歩けるようになるまでこの痛みに慣れるしかないか…そう思い、一歩踏み出そうとした時ランサーが俺の横に並んだと思ったら行き成り担ぎ上げられ荷物担ぎさせられた。 思わぬ行動に吃驚し、離せ馬鹿!と暴れようとしたが傷が痛むなら素直に痛いから手を貸して呉れと言いやがれ馬鹿、と青のサーヴァントはぶっきら棒な言い方で言った。 「だからお前はやせ我慢しすぎだっての。いい加減俺に頼るとかしやがれ」 「…仮マスターになった俺が如何してお前を頼らなきゃ行けないんだよ」 「お、何だ?ご不満か?何だったら此処で下ろしても別に構わないぜ」 「………ずるいぞランサー。初めて会った時からそうだった、お前はずる過ぎる」 「褒め言葉なら有り難く頂戴するぜ」 一応柳洞寺の塀が見えたら下ろしてやっからそれまで俺に担がれていろ、とランサーはそう言って薄暗い木々の道を歩く。 真逆サーヴァントに介抱されるとは思っても見なかった…だけど、たまにはこういうのも悪くはないな…。俺はそう思い、手当てし終えたばかりの左腕の傷をギュッと優しく掴んだ。 |
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