交差する彼らの居場所 第一章『異変』 | |
作者: 悠蓮 2009年05月23日(土) 23時54分42秒公開 ID:XnxKweJ8Y8w | |
第一章『異変』 東条彰人は今、平凡な学校生活を終え帰宅するところだった。 早々に帰る支度を終え、教室を出る。 「東条!」 否、出ようとしたらクラスメイトに引き止められた。 「……なんだよ」 明らかに不機嫌そうな顔をして彰人はクラスメイトを見つめる。 「だからこの前言ってた試合の話! マジで人数足んねえんだよ」 やっぱりそれか、と彰人はため息をついた。 彼の言っている試合とはサッカー部の試合のことだ。人数不足のため試合に参加できず、こうして必死に助っ人を探しているのだ。 「だから別に俺じゃなくてもいいんだし、別の奴に言えよ」 「他にいないから困ってんじゃん」 「じゃ諦めろよ」 「うっ。この薄情者〜」 「へいへい。俺もう帰るからな」 クラスメイトを適当にあしらい、学校を出ていつものように一人で家への道を歩く。 いつもと変わらない通学路を歩き続け、ふと彰人は思う。 ……先ほどのクラスメイトは今頃必死に汗を流しているところだろうか。 ご苦労なことだと彰人は思う。 別に部活動に精を出すことがくだらないことだとは思っていないし、応援する気持ちもある。 ただ、自分がやるかやらないかは違うのだ。 対した目標も技量もないただの人数合わせだけでやるべきことではない。 特に自分が必要とされているわけではないのだから……。 「……別にどうでもいいことだけどさ」 ある意味、あのクラスメイトがうらやましいとさえ彰人は思った。 彰人がとある横断歩道を渡ろうとしたときだった。 (……なんだ?) いつもと同じ帰り道。見える風景もいつもと同じ。だがそこに彰人が見慣れないものがあった。 横断歩道の向こう。その道の端に置いてある"それ"は箱だ。綺麗な六面体の箱で面にはさまざまな文様が描いてある。 「なんだあれ」 なぜ道端にこんなものがあるのか。声に出して問いたい気持ちになったがあいにく今はその問いに答える者がいない。 彰人は横断報道を渡り、その箱に近づいた。鞄を地面に置き、その箱を手に取る。 ちょうど両手で持てる大きさの箱だ。例の妙な文様はどうやら全面に描かれている。 (一応……落し物になるのか?) こんな箱がそこらにあるわけがないので、もともと誰かの持ち物だったのだろう。 しかし、こんなに大きな箱を落としたら持ち主が気づく。落し物ではなくただ単に置いてあるだけなのかもしれない。 もしこれが本当に落し物なら交番に届けるという手もあるだろうが、こんな怪しい箱もって行っても怪訝な顔をされるだけだろう。第一ここから交番は遠い。 「……はあ」 しかたがないので彰人は近くの空き地まで箱を持っていき隅においておくことにした。少なくとも道にあるよりはマシだ。もし持ち主が取りに来たとしてもあそこなら気づくだろう。 (……しかしなんだったんだあれ) ⇒To Be Continued... |
|
■一覧に戻る ■感想を見る ■削除・編集 |