交差する彼らの居場所  エピローグ
作者: 悠蓮   2009年05月24日(日) 00時43分13秒公開   ID:XnxKweJ8Y8w


 いつもの学校、いつもの生活。
 それを終えて彰人は帰宅するところだった。
「東条ー」
 帰る準備をしていたらクラスメイトから声をかけられた。
「……無茶言ってるのは分かってるけど、やっぱり試合に参加してくれないか?」
この間サッカーの試合に参加するように頼んできた奴だった。
「……まだメンバー揃ってなかったのか」
「っう」
 彰人の言葉に少年は呻く。
「サッカーする奴ってそんなにいねえの?」
「うちの学校は少ないんだよ」
「へー」
 彰人は今にも凹んで泣きそうなクラスメイトを見てそっと微笑んだ。



「……いいぜ」
「へ?」
「だから試合出てもいいって」
「マジ!?」
「さすがにそんなけしつこく言われるとな」
 そう言って彰人は方をすくめる。
「あぁでも今日から練習てのは勘弁してくれよ。用事あるから」
「分かった! じゃあまた明日な!」
 肩の荷が下りたとでも言うようにクラスメイトは足取り軽く教室から出て行った。


*     *      *
 

 あの箱を見つけてから約一週間。
 彰人の周りは少しずつ変化していた。
 後から来た魔道師たちによれば彰人は先天的に精霊《スピリット》の力を強く引き出す能力があるらしかった。
 同じ空間にいるだけ精霊《スピリット》の力を底上げする存在。
 サモン・フェアリーがエイダの呪縛かあら逃れたのもそれが理由だと言われた。
 また、精霊《スピリット》と同調することで本来その精霊《スピリット》が使えない力を使うこともできるそうだ。
 その辺は何度説明されてもよく分からなかったが。
 ただ自分が普通の人間ではなくなったことはよく分かった。
 そんな彰人が今、どうしているかというと……。
「あ! ヴェルー!」
「遅い。そして大声を出すな」
「うっせぇ。学生はいろいろ忙しいんだよ」
「フン。……で、今日保護する精霊《スピリット》だが……」
 ヴェルと一緒に魔道師の一員として精霊《スピリット》の保護をしていた。
 もっともそれまでの生活のこともあるので兼業という形をとっているが。
 ヴェルの体も彰人とサモン・フェアリーの同調によってすでに元の体に戻っていた。
 そしてサモン・フェアリーはと言うと……
「……そういえばアキト。サモン・フェアリーと正式に契約したんだろ?」
「え? ……あぁ」
 彰人とともにいることを選んでいた。
 今も普通の人間には見えないが、二人のすぐ近くを飛んでいる。
「名前はちゃんとつけたのか?」
「へ? あ!」
「貴様ちゃんと説明聞いてなかっただろ」
「お前の説明は分かりずらいんだよ」
「うるさい」
 ほっておけば口喧嘩に発展しそうな二人を慌ててサモン・フェアリーが止める。
「……ふぅ。とりあえず、今からでいいから名前決めておけ。」
「わーったよ。えっと名前は……」



 少年の周りは確実に変化していった。
 しかし、一番変化したのは自分自身だと少年は自覚しているだろうか。
 交差した彼らの物語はまだ始まったばかり。
       


                        



■作者からのメッセージ
エピローグです。
これにて「交差する彼らの居場所」は終了となります。
ここまで読んでくださったみなさま、ありがとうございました。
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