意地っ張り子猫シッターさん★Ver8 | |
作者: なぁび 2009年06月07日(日) 19時42分26秒公開 ID:/dxzQ0Wmf36 | |
あれから数日。 咲島 李玖の風邪はすっかり治りました。今日は親の許可も得て登校です。 ただ、俺、あの時の記憶が…まったくないんだ。 あの時ってどの時かって? …そりゃもちろん、 風邪の時の記憶だよ!!! ただ…目を覚ましたら、俺は不覚にも月の腕の中で眠っていたんだ。 不覚とは言ったけど、安心して、俺は寝ていた…。多分、今まででいちばん安心して寝てたんだと思う。 今日の朝、制服に着替えようとパジャマを脱いだ時、パジャマから月の移り香がして…しばらく、脱いだパジャマを手放せないでいたんだ…。 なんとなく乙女チックな描写なのは気のせいだ。 うん、俺は恋なんてしないって決めたし、そもそもめんどくさいとまで言ったじゃないか。それなのに今更…。 「先輩!おはようございます!元気になったんですね!よかったです♪」 通学路を途中まで行くと、案の定、月と出くわす。 いつもここで月は待っている。 「あ、ゆ、月…はよ」 「先輩、あいさつくらいちゃんとしましょうよ〜」 …出来るわけもない。ていうか、俺、こいつの腕の中で安心して寝てた…んだよなぁ?その前に何か…もっと何かすごいことを俺はしてたんじゃないか? 「あー…え、と、看病…?してくれて…ありがとう」 一応感謝の言葉は述べておこう…。しかし目線は…どうしてもそらしてしまう。 「先輩…かーわいいっ♪」 またいつものように抱きつき…。 「月!待て!ここ通学路…公道だから!」 ここでこんなことを言っても月にはきかない。顔が赤くなってるのを感じる。 「…ぶー!…ま、そんなところも可愛いんだけどね♪」 あ、れ…?今日は…終わりなのか? いつものように、次はもっと強い力で抱きしめてくるかと思ったのに…。 ――淋しい。 「ちっ、違う!それはない!」 一瞬、とは言えそんな思考が頭をよぎったことに俺は少なからず動揺してしまった。 「…?先輩?何が違うんですか?」 「…あ、いや…」 恥ずかし…俺なんであそこまで動揺してんだろ…。(自分のことながら)あほくさ。 「そういえば、先輩って風邪引くと子猫みたいになっちゃうんですね♪」 「は?子猫?」 月が唐突に言う。 「あれ?覚えてないんですか?風邪引いた時のこと…」 風邪。その単語に少なからずまた俺は変な反応を示してしまう。 「先輩も甘えたかったんですね♪あんなに素直になるなんて…いつもあんな素直でもいいのに、意地張っちゃだめですよー?」 甘えたかった?素直になる? 「もう可愛かったんですよ?とろんとした目で俺の名前呼びながら俺に手伸ばしてきて…抱きしめて欲しかったんでしょ?」 な、なな、ななななな…? 「頭撫でてあげると、先輩目細めてまるで猫みたいになって…」 そうだ。思いだした。思い出したくないけど思い出した。 俺、月に思いっきり甘えてた。後輩に思いっきり甘えてた。 恥ずかしい――…。 「いつも意地張ってるからあれが本音なんですよね?いつも素直でも俺は先輩ならなんでも…」 「…黙れ…」 「え?先輩何か言いました?」 「黙れって言ってんだろ!!」 気がつけば、もう遅い。 俺は思いっきり叫んでいた。通学路の真ん中で。 道行く人全員が振り返る。 「…せ、先輩…?」 「あ、いや…そ、の…」 後からはっとしたがもう遅い。 「ごめん…っ!」 「先輩!」 それだけ言って俺は学校までの道のりを一度も止まることなく走った。ひたすら走った。 どうせ、月のことだ。昼休みくらいには…いつものように俺に話しかけてくれる。 なんて、思ってた。 でも実際は、そうでもなかったね。授業の間の休み時間にも、昼休みにも、放課後にも、月は俺の目の前に姿を現さなかった。 いつもあんなに迷惑がってたのに、これで俺はせいせいするんじゃないの? うるさい奴がいなくなったって、これでいいんじゃないの――…? でも、俺が本当に望む答えとは、何かが違ったんだ…。 ⇒To Be Continued... |
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