エイライヴ・ブルー -The bloodlly world |
作者: 清嵐青梨 2009年06月17日(水) 00時06分34秒公開 ID:L6pfEASBmTs |
――西暦2025年、東京某所。 カランと一つの銃弾がテーブルの上からタイルの床へ落ちてしまった。銃弾一つ一つをシリンダーの中へと敷き詰めるのに夢中になっていた男は、落ちてしまったその銃弾を拾い、埃が付いていないか確認すると最後の隙間に銃弾を敷き詰めると弾倉の中へ入れる。 シリンダーの中に詰められた銃弾の重みを手で確認すると、ほら弾込め出来たぞとソファに寄りかかっている一人の青年に向けて銃を投げつける。 ぼぅっとしていた青年は目前に投げてきた銃に驚き、反射でその銃をキャッチすると吃驚するじゃないかと言い返すも男は、呆っとしてるお前が悪いと言い返された。 「ほら…早々と“狩り”に行って来いよ。あの子の運命が掛かっているんだぞ、お前が動かなければ誰が動くってんだ」 「…確かにそうだな。俺が此処で動かなくちゃ、カエデを救えないからな」 そう言って青年はソファから立ち上がってうんと背伸びをすると、それじゃ行ってくるよと言って男に背を向け手を上げると男は胸ポケットから煙草の箱を出し、一本だけ取り出すとそれを口に咥え、気ぃつけて行って来いよ、トール。と言ってカチリと煙草の先にライターの火を点けると壁にかけてあるタペストリーに向けてふぅーっと紫煙を吹きかけた。 ―ハリベルトと呼ばれる「 織笠カエデ…緑の髪に薄緑色の瞳を持つその彼女に出会った俺は、彼女の過酷な運命を知ることになる。 「私ね…ハリベルトっていうものを持っているんだ」 「……ハリ、ベルト?何だそれ、新種の化学物質か何かか?」 「矢っ張りそう思うよね…でも違うんだ。ハリベルトっていうのは、妖の核っていう意味合いを持つくらいの貴重な核なんだって」 「妖って…妖怪や幽霊の呼称だよな?カエデはそれを持っているっていうのか、でも何処に持っているんだよ」 「それはね――」 その先を話した彼女の証言に、俺は彼女の運命を回避させることと…彼女の生命を守ることを堅く決心した。 ―ハリベルトを求める集団・アグシス― 目の前で血飛沫が爆ぜる。紅い血が白い頬にかかったのにも係わらず其奴は只々ニッとスローモーションで前のめりに倒れていく一人のハリベルトを持つ男がその場で絶命した。 白い頬にかかった血を少年は手の甲で拭い取るとその手で心臓がある場所を貫き、心臓の塊を掴んだ。彼はその手で心臓がちゃんと掴んでいるかどうか確認するとそのまま引き抜く。 両手が血で濡れて白い服の大半は全て血で穢れてしまっている、不思議なことに濃紺の髪だけは血飛沫にかからなかった。然も斧も使わずに俺の目の前で男の首が手刀で刎ねられるという情景は初めて見た。 残酷な情景を目の当たりにした俺は今は気を失っている彼女を庇うように傍へ寄せると呆っとしている白い少年を睨む。若し今のように彼女を殺すのならば彼女の盾になって彼女の生命を護るくらいにしか今俺に出来る最善の危機の回避である。 血の海の上を白い少年が歩き、俺とカエデに近寄る。そして灰色の瞳で見下ろすなり、彼はニッと笑みを浮かべた。 「そっちのお姉さんの分も狩りたかったけど、もう時間になってしまったから…またいつか会おうね、お兄さん」 そう言って白い少年は俺に名を告げずにそのまま俺の横を通り過ぎて行って、薄暗い闇の中へ消えていった。 アグシスを討つ者・ライヴァール 「――このでかいものは 「頑張って付いていってはいるんですが…これ、全部何処から」 「殆どは上海の武器商人からなんだが、たまに闇市場でも買いあさっているわな」 そう言って男――早瀬駿一と名乗る男――は胸ポケットから煙草の箱を出し一本だけ取ると、煙草の箱をテーブルの上に投げつけると煙草を口に咥え、先をライターの火で点けるとプハーッと紫煙を撒く。 「で、お前さんはこの危険な道に入っても構わないっていうのかい?」 「そういう早瀬さんも危険な道に入っているじゃないですか。アグシスを討つとか言っていましたけども、本当に彼奴等を討つ術は」 「ある…っていう確信はついていないがな、如何しても彼奴等を討たなければお前さんの彼女が死んじまうんだろ?」 だったらとことん手を貸さなくちゃいけねーなー…そう言って早瀬さんは煙草の箱が置いてあるテーブルに近寄り、テーブルに置いてある一つの銃を掴むとそれを俺に向けて投げつける。 行き成り投げてきたものだから驚いて取り落としそうになったが、なんとか落とさずに銃をキャッチした。 ズシリ、と手の中で感じてくる銃の重みに俺は無言でそれを凝視していると、銃の扱いにゃ慣れてねーようだから地下に行って少しでも銃の重みと仕組みに慣れてこい、と言い放ってきた。 「それともなんだ、お前さんは真逆此処で諦めるっていうのかい?」 「阿呆言え、俺は此処で諦めるわけには行かないさ。一度修羅場に一歩踏んでしまった身…なんとしても生き抜いて見せるさ」 「そういうと思ったぜ…お前さんの仕事は簡単だ、この事務所を嗅ぎ付けたアグシスの三下を抹殺すること。謂わば見張り役だ」 如何だ、お前さんにとっちゃ中々適した仕事だろ?と早瀬さんはニッと俺に向けて笑みを向ける。その笑みに俺は釣られてふっと笑みを零すと、確かにその地味な仕事なら俺にとっちゃ適任だな、と言って銃を懐の中に仕舞い込むと地下へ繋がる螺旋階段を探しに“武器庫”と呼べるに相応しい部屋を後にした。 西暦2025年7月2日…彼女に出会った俺の運命は其処で道筋を逸らし、更なる混沌の道へと引き摺りこんでいく。 その混沌の道へと続く一つの真実を知った時、二度といつもの二人の世界には戻らないことも知らずに―― |
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