Anfair-Crossload 前編 |
作者: 清嵐青梨 2009年07月15日(水) 00時43分13秒公開 ID:L6pfEASBmTs |
何時の日だったのか忘れてしまったのだが、それでもあの鮮明なあの日は決して忘れてはいなかった。 あの日は確か念に一度に行われる祭りの日だった、沢山の屋台があって沢山の人が溢れ返ってて、仕事だっていう疲労なんか綺麗さっぱり忘れてしまったかのように大いに盛り上がる祭りを心行くまで、そして人それぞれの満足がいくまで楽しんでいた。 その祭りの中で僕は養父と二人で祭りを楽しんでいる人たちの姿、祭りの中で催している出し物の数々、そして人々が魅せる笑顔をカメラに収めていた。小さい頃将来の夢が「 そして迎えた今年の夏・二十歳の誕生日を迎え終えた頃、養父からのエアメールが届けられ、書かれたメールの文章からは「夏休みの日一緒に祭りに行こう、そして一緒に写真を撮ろう」という内容が間違いなく養父の字によって綴られてあった。 そのメールがきっかけで僕は帰郷したのだ。養父と交わした一緒に写真を撮るという約束を果たすために……。 その祭りの初日、僕は養父と一緒にカメラに写真を収めていると見知らぬ集団に目を付けられたのだ。やっと見つけたぜ洋一さんよぉ…と集団の一人が言うなり僕が持っているカメラを寄越せと暴言を発し乍ら養父の眉間に銃を突き付けられた時には、養父は銃を突きつけられたのにも係わらず真顔で僕を自分の後ろにやるなり逃げろと小声で言ったのを だから僕は養父の言うとおり彼等から逃げたのだ。集団のうちの二・三名に追いかけられ銃を乱砲され捕まえられそうになって…それでも僕は必死で彼等から逃げた。必死で駆け走って、完全に迷ってしまった養父の姿を探し乍ら…そして養父の大事なカメラを抱え乍ら必死で走った。 追い詰められた時には駄目だ…と半ば諦めかけていた。だけど同時に死にたくはないと思った。もっと生きたいと思った。いや、生きたいと強く願っていたのだ。 その時に僕は“彼”に会ったのだ。沢山の街の光に溢れた夜の都市の中で僕は彼に出会ったのだ…。 純白のカッターシャツの袖をナイフか何かで破ってノースリーブにした服装に青いジーパン。短く切り揃えられた黒髪に藍色の目…そして左手には白い輝きを放つ白い拳銃が握り締められていた。 僕を追いかけてきた二・三名をたった一つの拳銃で一気に撃退すると僕の手を掴んで、此処にぼうっとおったら 路地裏から完全に抜け出し大通りに出て行き交う人の群を擦りぬけ乍ら、お前の親父さんなら無事やで。親父さんを殺そうとした奴等なら既にやっつけておいたし、親父さんからお前を見つけ出して欲しい言うてきたから序でにお前も助けたってわけやと言って彼は僕に向けて笑顔を作ると、良かったな。親父さんの大事なカメラが無事で、と言った。 僕はようやく此処で気付いたのだ。嗚呼…この人は優しい人なんだな、と。 そして僕はあの日から気付かぬうちに彼に惹かれていたという事実に気付かなかった、その藍色の瞳に吸い寄せられたかのように…。 僕は佐野陵牙という、一人の“ |
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