アナザーワールド 1スレッド目
作者: Leaves   2009年07月28日(火) 22時14分44秒公開   ID:tIm2P9orRJI
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藍の髪を持つ竜族の魔道師――トゥエルはさきほどクエスト管理部で初期クエストを受けたところだった。
初期クエスト、通称初クエ。
『アナザーワールド』をプレイするときに必ず発動するイベントだ。
GMや帝によるランク判定が行われる重要イベントの一つである。
クエストの内容はスライム討伐。
比較的簡単なクエストだが魔道師は防除も体力もないので少々厳しかったりする。
「……回復か盾役……光魔道師か騎士がいないときついかな」
トゥエルはそう言い、広場でメンバー募集のシャウトを出す。
どちらにせよランク判定者を仲間にしなければ意味はないのだ。
トゥエルはのんびりと参加者を待つことにした。



「……最近クエ行ってないわ。これじゃあ私の力も弱まっていくばか……」
栗色のセミロングにブルーの瞳を持つ天使が管理部前の広場にいた。
背が低く幼いイメージのある少女だ。
彼女のアバター名はナギ。
ナギは広場をある程度見回した後、とあるシャウトを見つけ参加申請を出した。

「……あ、きた。よろしく」
トゥエルがのんびり待っていると参加申し込みのサインが出た。
相手は天使族の少女、アバター名はナギ。
(Cの光魔道師……まあ初クエだしなんとかなるかな)
そんなことを思いながら参加許可を出した。

ナギがトゥエルのクエストに参加登録したころ。
「新人と一緒にクエスト行って、ランク報告…めんどくさい…」
白と黒の羽を3つずつ持つ少女――いや、その外見は女性と言ってしまって問題ないだろう。
それぐらい彼女の姿は妖艶だった。アバター名は澪。
「めんどくさいからコレでいいや…」
澪もまたとあるシャウトを発見し、参加申請を出した。


「……よろしく」
新しく入ったメンバーにトゥエルは軽く会釈する。
「……これがメンバー?あ、私ナギ。こう見えても回復が得意なの。一応天使の血引いてるからね!」
入ってきた澪を見てナギが軽く自己紹介する。
「よろしく。私はエルフの澪」
それを受けて澪も簡単に自分のデータを提示する。
彼女もナギと同じCランク冒険者だ。
――『アナザーワールド』には全ての物にランクが設定されている。
プレイヤー一人一人にはもちろん、モンスターやアイテムにまで設定されている。
モンスターは強さ、アイテムは使用制限。
そしてプレイヤーにつくランクは単純な強さではなく、帝への近さを示したものだ。
ランクはS.A.B.C.D.E.Zであり、Sの次が最高ランク「帝」である。
「あ。名前、トゥエル。魔道師。水」
二人が自己紹介したのを見て、慌ててトゥエルがそう言った。
「……じゃあ、行く? スライム討伐。平原へ」
「いいわよ。今の私は癒力満タンだし♪さぁさ、れっつら、ゴー♪」
トゥエルの問いかけにナギは上機嫌に答えた。
「で、平原ってどっちだっけ」
「平原は丘を越えた向こうよ。羽でひとっ飛びよ!」
軽いノリでナギはそう言った。
たしかに羽があればすぐに目的地へとたどり着ける。
「俺は羽ない。ゲートどこ?」
が、トゥエル――竜人族に羽はない。
彼らの種族にあるのは鱗だけだ。
「あ、そうか。ゲートは……たしか6番ゲートだからこっち」
そういうとナギは羽をしまい歩き出した。
歩いていく彼女の後ろを澪が退屈そうについていく。
彼女にとって今回のクエストはあくまでも調査対象。
本来の彼女のレベルを考えるならこれほど退屈なことはないだろう。
「……ふわぁ」
彼女達が普通に6番ゲートへと足を向け歩いていたが、一人トゥエルはあくびしながらナギ達とは反対方向に歩いてく。
「………逆」
そう言って澪はトゥエルの首を持って飛び上がった。
当然首が絞まる。
「うぐ、うぐぐ」
トゥエルは苦しそうにもがくがそんなことは二人とも気にしない。
「ちゃんとついて来てる? お願いだから迷子にならないでね」
ナギはそうトゥエルに注意を促す。
しかし当の本人はそれどころではない。
「転移する。また迷うだろうし」
澪はそう言って転移スキルを使用する。
正直やりたくないオーラを全身にかもし出しながら澪はトゥエルをつれその場から消えた。
「……え……お、置き去り……最初からこれってひどくない?!」
一人置いていかれたナギは慌てて羽を出し平原へと向かった。



⇒To Be Continued...

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