これCry Lovers 第5楽章 空があまりにもきれいだったから |
作者: なぁび 2009年08月04日(火) 22時36分36秒公開 ID:sw0xlSukK4E |
「ねぇ、みんな聞いて欲しいの」 今日は登校日。高等部では文化祭が近い。 ここは裏庭。ここでなければ会うことが出来ない。なぜなら瑠姫たちの通っている学校は男女別だからだ。 今は放課後、真剣な表情で瑠姫は話を切り出す。 ここにいるのは、瑠姫、渚、梗樺、霧斗、実晴。 「話って、何?」 渚が聞くと、瑠姫は一瞬黙り込む。そして。 「あのさぁ、みんなは、夢とかある?」 「夢?」 瑠姫の一言に、みんなは一瞬考え込んだ。最初に口を開いたのは、梗樺。 「ん、そうだなぁ。これといってはっきりした夢ってのはないけど、何かこう、おっきいことがしたい、みたいな」 「梗樺らしいね。私は平凡だけど、お嫁さんとか憧れるな〜」 お嫁さん。それを聞いて、瑠姫は渚らしいなぁと思わず眦を下げる。 そして男子軍は。 「俺もおっきいことしたいかも。でもとりあえずは大学行って…みたいな感じかな」 「僕は建築関係の仕事が出来たらと思います。美術で透視図法やってそれからって感じですかね」 こちらは現実的だ。瑠姫はタイミングを失う。 「じゃあ瑠姫さんの夢はなんですか? なんでもいいですよ、夢は人それぞれですから笑いません」 元気をなくした瑠姫に、霧斗が優しく語りかけた。 「私の、夢?」 「やっぱり瑠姫も女の子だからお嫁さんかな? 絶対可愛いよ?」 お嬢様。頭の中は、いつでも夢色。瑠姫はうつむく。 「…し、…ど…たい」 「え?」 今度は、真っ直ぐ顔を上げて、こう言った。 「私、バンドをやりたいの…っ!」 「バン、ド…?」 「でも、私勇気出なくて…っ…だから、みんなの力が欲しいの」 気が抜けたのか、言い終えた瑠姫は地べたにへたり込んだ。 「こんなの、勝手だけど…」 「…それって思いっきしおっきいことじゃん! いいじゃん! あたしもやっていいの?!」 「…へ?」 瑠姫が顔を上げると、そこにはきらきらした笑顔のみんな。 「何、それ! 瑠姫それ超イイよ! 私もやりた〜いっ」 「俺もやっていいの?! だったら嬉し過ぎて死んじゃうかも!」 「僕も音楽は好きですよ。特に、自分でやる方はね」 「ねぇ、気が早いけどバンド名はどうする?」 きらきら笑顔の、その後ろの空が、あまりにもきれいで。 「そうだなぁ、私、今思いついたのは…」 だから思わず、彼女はこう言ったんだと思う。 「――――… |
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