これCry Lovers 第6楽章 恋心、奏で紡ぎ |
作者: なぁび 2009年08月08日(土) 21時16分34秒公開 ID:sw0xlSukK4E |
放課後。誰もいない教室。家よりも何倍も何十倍も集中できる、そんな場所だと瑠姫は思う。 「さて、作曲でもやってみようかな」 弟、李玖も作曲はやっている。別に、だからではない。 机の上にルーズリーフを置き、瑠姫は腕を組む。 (ジャンルは、どんなのがいいのかな…? 恋愛? 普通に友情っていうかあと季節ものとかがいいのかな?) しばらく、瑠姫は目の前の真っ白なルーズリーフとにっらめっこしていた。しかし、ルーズリーフが答えを出してくれるわけもなく。 「…だめだ。自分で考えなきゃ」 今までもいくつか詩を作ったことはある。作った、というかふっと思いついたものだ。 特に思いつくのは授業中、先生が話をしている最中。話を聞くわけでもなく、ただぼーっと外を眺め、自然の奏でるメロディを聴いているだけ。 そういう時に瑠姫はよく思いついた。それをノートの端に書き溜めていた。 それを思い出し、そうか、それがあったかと独り言を言い、瑠姫はカバンからノートを数冊取り出す。 ノートを開くと案の定、殴り書きだが数行程度に詩が書いてあった。 今読み返すと、恋愛ものが多い。 「この頃から、好き、なのかな…?」 誰もいない教室に、その声は切なさを残して消える。 こんなにも、コトノハが溢れてくるのはどうしてだろう。 自然に紡げる気がした。 「瑠姫〜? 何やってるの、放課後まで」 物思いに浸っている瑠姫。そこへ入って来たのは、渚だった。 「っわ、渚…残ってたの?」 「うん。図書室に行ってたの」 渚は瑠姫の前の席へと座る。 「瑠姫も行ったら? ミステリーの新書入ってたよ?」 「あぁ、うん。後で行ってみる…今は、ちょっと」 「…ちょっと?」 「…詩、作ってるから」 そこで急に恥ずかしさを覚えた瑠姫はノートを乱雑に机に押し込んだ。 ――――こんなもの、見せられない。 しかし渚はにっこり笑ってそれをいとも簡単に引き止める。お嬢様という育ち、外見からは想像もしえない力だった。 「何か書いてあるの?」 「…渚…どこにそんな力が…?」 驚きで椅子を倒し、床でまるで悲劇のヒロインのようなポーズをしている瑠姫をお構いなしに、渚はパラパラとページをめくる。 「いたって普通のノートだけど…落書きでもしてるの? 「いや、だからなんでもないって…」 瑠姫が椅子に座り直した時、渚の手が止まった。 「…これ、って…?」 瞬時に何が書いてあるか理解した瑠姫は、ノートを奪い返そうとする。が、渚の方が早かった。 「…瑠姫は、本当に修さんのことが好きなんだね」 それが、渚の感想。 「…うん。好き。いつも近くにいるけど、でも遠い。近くにいるから、その分だけ遠いの」 「近くなればなるほど、遠く感じるよね。だったらいっそ、このままがいいのかなぁとも思ったりしちゃう」 そういう渚の表情は、どこか切なくて。 「あのさぁ、渚も好きな人…とか、気になってる人とかいるの?」 「えっ」 瑠姫のストレートな質問に、渚が一瞬固まった。そして頬を赤く染める。 「やっぱりいるんだ?」 「る、瑠姫はストレートすぎるよ! もうっ!」 「じゃあいるんだね?」 その言葉に、渚は素直に頷く。 「誰?」 「そ、そこまで聞かなくてもいいじゃん! は、恥ずかしいもん…」 そんな反応が出来るのがうらやましい。やっぱりなんだかんだ言っても渚は可愛いと思う。 「ここまで言ったんだから言ってもいいでしょ。別に、誰にも言わないよ」 「本当?」 「うそだったら死刑にしてもいいから」 じゃあ…と、渚は口を開いた。 「…私、実晴が好き。大好き…」 「実晴?」 「う、うん…最近、人気あるじゃない? 女子に…」 「それは男子のくせに流行とかファッションセンスがいいからだよ、特に女の子ものの」 「それでも、人気あることには変わらないから…それで、私気付いたの」 あぁ、やっぱり瑠姫も渚も女の子だ。恋をすると、どうしようもなくなる。不安になる。 「他の女の子と付き合ったら? って思って…それで、それは嫌だと思った…」 なぜ恋をするとこうなってしまうのだろう。涙が嫌でもあふれて。これでもかっていうくらい嫌なことばっかり頭に浮かんで。 「最近、瑠姫可愛くなった」 「へっ?」 渚が不意に言う。 「気付いてないかもしれないけど、男子とか瑠姫好きな人が多い。本当に、可愛くなった」 思わず瑠姫は頬を赤らめた。同じ女子同士とはいえ、可愛いと言われるとついついこうなってしまう。 「「私は、応援するよ、瑠姫(渚)の恋…」」 |
|
■一覧に戻る ■感想を見る ■削除・編集 |