これCry Lovers 第7楽章 霧斗のお父さん
作者: なぁび   2009年08月09日(日) 19時11分26秒公開   ID:sw0xlSukK4E
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 「で、どうするの?」

 今日はみんなで霧斗の家に来ていた。

 他のメンバーの家でもいいが、瑠姫の家は母親がいるから、梗樺の家は兄たちがうるさいから、実晴の家は改装中のため、渚の家は落ち着かないため(広いのだ)、結局霧斗の家になった。

 「どうするって…何を?」

 梗樺の問いに、実晴がとぼけた感じで返す。

 「何を、って楽器とか決めなくていいの?」
 「あぁ、私、勝手にで悪いけど、なんとなくは決めてあるよ」

 瑠姫はカバンから一冊のノートを取り出した。

 「とりあえずだから、この通りでなくてもいいから。まずは渚はキーボード」
 「私? ピアノ弾けるから大丈夫だよ?」
 「あとたぶんボーカルは梗樺がいいと思う。歌唱力もあるし、となると、エレキかな」
 「あぁ、歌はいいけど…好きだし?」

 けど…と、梗樺は続ける。

 「楽器、正直経験ないんだよね。触ったことくらいはあるよ? …あ、でも出来ないけど」
 「出来るじゃないですか。前に僕のお父さんが教えたじゃないですか」
 「え?! マジ?!」

 実晴が思わず飛び出した。

 「霧斗のお父さんって何者?!」
 「あの、実晴も会ったことありますけど? それに、その時実晴も教えてもらったじゃないですか」

 あくまで冷静な霧斗。

 「あ…そうだっけ?」
 「ですから僕はベースはそれなりに出来ます。梗樺さんと実晴はエレキが出来たはずです」
 「ん、じゃ話は早いね」

 「なんだ、瑠姫ちゃんたちバンドやるの」

 その時背後から不意に声が聞こえた。振り返ると、そこにいたのは。

 「お父さん…」

 まさに霧斗のお父さんだった。

 「父さんも若かりし頃を思い出すよ。あぁ、高校の時の文化祭ステージで…」
 「その話はいいからお父さん、楽器を教えて欲しいのですが」

 しみじみと思い出話を語りだしたお父さんに突っ込みを入れると霧斗は立ち上がり、 
 
 「僕たちの夢はバンドをやること、だから楽器をやりたい。でも楽器の経験が浅い。だからお父さんの協力を得たい」

 父は思った。こんなに真っ直ぐに意志表示したことは、未だかつてなかったと。

 「そうじゃなくても、どうにかしてやる」
 「あたしからもお願いする。どうしても、やりたいんだ。お願いします

 ここまでされて断れないほど父は意地悪ではない。

 「…それにいいえとは言えないな。行ったところで、特に梗樺ちゃんはそう簡単にあきらめるような性格じゃないしね」
 「じゃあ…」
 「ただし。僕にも都合がある。だから、こっちの都合に合わせること。それが出来なきゃ、やってあげないよ」

 それは、厳しいながら、父なりの優しさ。

 『お願いします…っ!』

 今度は全員が言った。

 「は、はは。いいねぇ、青春って!」

 そう言って父は豪快に笑った。

 「よし、今日はこの、霧斗の父ちゃんが何かおごってやろうじゃないか!」
 「だって。みなさん、どうします?」

 それは、素直にみんなこう答えると思う。

 『お願いしまーす♪』
 「みんな現金だな! よし、行こうか!」

 まだまだ問題は山積み。けれど、仲間と一緒が、楽しい。








⇒To Be Continued...

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