時の都と時の守護者 〜タイムズガーディアン〜 序章〜Chapter1‐1
作者: 羽丘 天空   2009年08月22日(土) 17時36分47秒公開   ID:sw0xlSukK4E
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 (ねぇ……?)

 彼女は、パズルのピースに心の中で語りかける。

 (もしも、この世にあるものが全部パズルで出来ていたら、どうなっちゃうかな?)

 もちろんピースは答えない。
 彼女は黙ってそのピースをぱちりとパズルにはめ込む。

 (どんなものでも、手に入れられる。パズルさえ組み立てられれば…ね?)

 部屋の中には、パズルがたくさんあった。完成したもの、まだ封の切られていない新品もあれば作りかけもある。
 彼女はパズルが好きだ。暇さえあれば部屋にこもってパズルとにらめっこ。毎日やっても、飽きない。

 (こんな楽しいもの、ずっとやってたいくらいだ)

 それと、彼女は声が出ない。

 失声症。彼女の場合は、心因性。

 いつからかしゃべらないようにしていたら、ある時本当に声が出なくなった。

 (でも、これでいいの)

 彼女はまた、ピースをはめる。このパズルもこれでもうすぐ完成。完成したら、それはただの絵。
 なんの面白みもなくなる。
 すると彼女は新しいパズルをやり始める。

 これの繰り返し。

 (貴方は、私をせかさないで、完成するのを待っていてくれる。まるでこの世界とは違う…)

 


 この世界は、止まってはくれない。いつもせかせかと時間ばかりが過ぎて行く。
 人は、何を求めそんなに急ぐのか。急いだら、本当に求めているものなど、見つかるのだろうか。






 ――――このパズルが完成して一つの絵になった時、新たな世界の扉が解き放たれることを、彼女はまだ知らない。







⇒To Be Continued...

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