BAT〜銀砂の国A〜
作者: クリカ   2009年11月15日(日) 19時41分05秒公開   ID:m5M8TG0eh.A



「・・・・・・。」


さっきからリアラは無口である



「どうしたんだ?」



慶はワッチにリアラを見ながら尋ねる


「さ〜ね。女の考えてることはわかんねぇよ。」


ワッチは笑う


「・・・・・・。」


慶はワッチを冷めた目で見ていた






「城に行くぞ。」


リアラはいきなり言った



「なんで?」


ワッチは首をかしげる


「あんた達、この国の情報を拾えないようじゃ、まだまだ甘いわね。」


リアラはフッと笑った


「情報?」


慶は耳を澄ます


情報らしい情報は聞こえてはこない


ただ雑音だけが耳に入る



「お前はただの人間だな、餓鬼。」



「(ムカッ!)ただの人間の何が悪いんだよっ。」




「・・・まあまあ、2人とも落ち着いて。」



ワッチが割って入る


「確かにリアラの言うとおりだぜ?こうやって旅をすること自体、普通のことじゃねぇんだから。」



「どういう意味だよ・・・。」


「・・・ただの人間以上の力は必要だってことさ。」


ワッチは仕方がないような顔をした








「では、これから作戦を説明する。」


リアラはどこから持ってきたかわからない何かの地図を出した


「・・・何の地図だよ。」


慶は地図を手に取った




「この国の城の敷内地図。」


「ブッッ!!!」



慶は吹いた


「しししししし城ぉ!!?何でそんなもん持ってるんだよ!」



「何だ。ケチケチするな、餓鬼。城の者らしき人からチョロッと頂いただけのこと。」



「スリじゃねぇかっ!!」


慶はツッコミ疲れをした



「おいおい・・・大丈夫か・・・・・?」



ワッチは慶の背中をさすってあげる


「ふんっ。それより作戦だ。あたしが城の扉を爆破する。ワッチは警備員を撃破。OK?」



「OK。」



「いやいやいやダメだよな・・・。」



「どこかだ?」


リアラとワッチはオールオーケーという顔で慶を見る


「何とか暴力ナシでお願いします。」








ある少女は頭巾をかぶり


商店街で買い物をしていた



「・・・そうだ。お姉様に青リンゴを買って差し上げよう。喜べばいいな〜。」



少女は果物屋に行こうとして走り出した







「なんで俺が食料調達なんだ・・・。」


慶はリアラからもらったお金を握り締め

商店街を歩いていた



そして曲がり角


慶が歩いていると・・・


「ちょっ・・・ちょーっとー!!」


横から頭巾をかぶった少女が飛び出してきた




ドッカーン!



「あ・・・。」


少女の持っていた買い物が落ちてしまった


同時に少女の頭巾も外れる



「わっ・・・!すまん!」


慶は急いで拾う


「ご、ごめんなさい・・・!」


少女も拾う





そして人々から零れる言葉・・・



「おい、あれって・・・。」


「ああ。間違いない・・。」


「アルミン様だ・・・。」


「変装して買い物かよ・・・。」





「・・・!」



(様・・・?)


慶はピーンときた


「お前って・・・王家の・・・・?」



「!」


少女は頭巾が外れていることに気づく



周りにはヤジウマが増えるばかり


少女は周りを見ることも出来ず買い物を拾い続けた





そしてすべてを拾い終わり・・・



「・・・ありがとうございました。」



少女は泣き出しそうになりながらも慶に礼を言った


「いや、いいよ。俺も悪いわけだし・・・。」


慶も立ち上がった


(この中を歩くのか・・・。こいつも大変だな・・・。」



慶は未だ立ち上がれない少女を見た



「・・・・。」


慶は少女に手を出した



「荷物・・・・・持つよ。」


「!」


慶は少女の荷物を持った



それでも少女は立ち上がろうとしない



「!・・・足でもくじいたのか?」



「え?・・・いや、そうではなくて・・・・。」



少女は立ち上がろうとする


「ダメだって。」



慶は少女の腕をつかんだ



「走るぞ。」


慶は走り出した


「わっっ!」


少女も引きずられるように慶に着いていく








「大丈夫か?」


「あ、はい。ごめんなさい。」



慶は頭巾を渡す



「・・・なんか悪かったな。俺のせいで正体がばれちゃって・・・。」



少女はすぐさま顔を上げる



「そんなことないですっ!あの中を一緒に走ってくれただけでそれはパーです。」


少女はニコリと笑った



「・・・そうか。」


慶は少女とリアラを重ねる



「・・・大違い。」


慶は笑いそうになった


「はい?」


少女は言い返す


「いーや、何でもないよ。」



「クスッ・・・。」



少女は微笑んだ


「私の名前はアルミンです。あなたのお察しの通り、王家の人間でございます。」


「あ・・・・俺は・・・・・慶・・・。」



(身分なんてないし・・・。)



「平民だ。」


「プッ・・・・・。」


アルミンはまた笑った


「アハハハッ!」


アルミンの笑い顔は可愛いかった



「またお会いできればいいですね。慶さん♪」


少女は歩き始めた



「ああ。」


慶は力強く言い返した








一方その頃・・・


「なんで慶はこんなに遅いのよ!」


「俺、腹減った・・・。」



心から無意味な2人であった


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