黒翼の魔女 プロローグ&第一話 | |
作者: えまり 2010年01月23日(土) 03時47分38秒公開 ID:s2/IWHRoys. | |
プロローグ:魔女のはじまり それによって起こされた風で、絹糸のような白銀の髪が流れるように靡いた。 黒い翼の持ち主は、女だった。 自身の翼の色と同じ深い黒の布を纏った女は、 目の前の、死体の山に対して。 「……魔女め」 憎悪を込めた低い声が死体の山から聞こえてきた。 魔女と呼ばれた女はその声にピクリと眉を顰める。 折り重なった死体から、満身創痍の状態で生き残った男が這い出てきた。 もう既に戦う術が一つもない男は女を睨み、恨み言を吐くことしかできなかった。 「お前の……所為で、数々の村が、焼け……人が死んだ…… その恐ろしい異形の姿……お前は魔女だ…… 息も絶え絶えに喋る男に、女はゆっくりと近付く。 その顔には――魔女と呼ぶには程遠い――聖女のような美しい微笑みをたたえていた。 「そうだな」 女の凛とした澄んだ声が、暗い空に響く。 「私は魔女だ。黒き翼を持ち、破壊の力を持った異形の魔女。 ――けれど」 男の目の前まで来て、女は立ち止まり、目線を合わせる為にしゃがみこんだ。 男は畏怖の念を抱き、体を震わせ、ガチガチと歯を鳴らす。 「私に人を殺させたのは」 女が優しく男の両肩に手を置いた瞬間、男はグッと首を絞められたような息苦しさに見舞われた。 女の両手を退かそうとするが、体は震えるばかりで動かない。 「私を本当の異形にしたのは」 「やっ……やめ、ろっ……ゆ、許し……て、くれ……っ!」 男は息苦しさと恐怖で目に涙を滲ませ、途切れ途切れに許しを乞う言葉を述べた。 しかし女は笑みをたたえたまま、言葉を続ける。 「私を魔女にしたのは」 「っぐうぅ……ぎ、いぃ……!」 狂気を秘めた赤錆色の目がギラリと妖しく光り、ボゴッと内側から沸騰するような熱さが男の喉の奥から湧き上がり、ボコボコと血管が浮き上がる。 「や、め……う、ぎっ……っっっ!!!」 一瞬、風船が割れるような音が空に響いた。 それは男の頭が破裂した音で、血や中身がビシャッと女の顔や衣服にかかる。 それでも女は笑っていた。 綺麗で無機質な笑顔で。 「……あなたたちでしょう」 ⇒To Be Continued... |
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