Nightmare 〜忘れていたかった記憶〜 |
作者: lie 2010年03月14日(日) 21時11分11秒公開 ID:te6yfYFg2XA |
「僕は、要らない人間なの?」 真面目な顔をしながら小さな少年が僕に聞いて来た。 「ねぇ。要らないのになんでここにいるの? 生きているの?」 だんだん、少年の声が大きくなる。 「今日、クラスの人に言われたよ。“お前なんて要らない”って…」 少年はズタズタに引き裂かれた大きめの服を着ていた。 少年の表情は見えない。 でも、どこかで見たことがある。 「…ねぇ。どうして、僕は要らないの?」 その言葉だけ繰り返す少年。 そうか。見たことあるに決まっている。 だって、この少年は周り全部が敵だと思っていた頃の“僕”だから。 僕は少年に一歩近づく。 「…“要らない人間”なんていないよ。多分、君も時間が経てば“必要とされる人 間”になれるから」 あの頃の“僕”は、誰でもいいから、多分でもいいから、その言葉が聞きたかった。 「人間そんなものだよ。…現に今はとても楽しいよ。友達も出来たし」 僕は少年の前まで歩み寄ると目線を合わせ、少年の頭を撫でる。 「近い将来、君にも出来るよ。すごく、すごく大切な人たちが…」 その言葉に少年は笑顔で大きく頷き僕の胸の中に入っていった。 忘れていた、忘れていたかった記憶。 でも、この記憶からは逃げることは出来ないのだ。生きている限り……。 癒されることの無い傷は思い出すたびに痛み出す。 |
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