黒い世界
作者: 檸檬   2010年03月15日(月) 12時26分45秒公開   ID:RUELGlKQEEI


数年前の叫び声 今も耳に残っている


「あんたなんかいらない!!」


何度そう言われただろう


何度痛みを感じただろう


何度・・・  ・・・







「起きな、美茗みめい


私を迎える声

私を現実に引き戻してくれる声



「おはよう、柊」



私を虐待から護って、庇って、右目の視力を失った彼女

柊は、大人っぽくて、賢くて、優しい

いつも私を助けてくれる 信頼出来る人


今、私と柊は二人で住んでいる



街の援助もあり、まともに暮らせる   けど







「あの子でしょ? 酷い虐待受けてたのって」


「隣にいる子、あの子庇った時に硝子の破片が目に刺さって・・・」




噂  それは敵

私に手を伸ばしてくる

いつの日も 人は噂を好んでる


私は耳を塞ぐ

吐き気がする

柊がちっ、と短く舌打ちをした それを聴いたのは私だけ・・・



「おはよ~」


教室に入るなり私にダイブしたのはしずく



いじめで前の学校に通えなくなった子

普段は明るく人懐っこく振舞うが、彼女もまた、心にブラックホールを抱えて生きている・・・




「あれ、あいつ、雫じゃね?」



近くの学校の制服を着た女の子がニタニタ笑って言う


取り巻きも「ほんとだぁ、きもーい」と言う

雫は俯いた

柊はその子達に襲いかかって、取っ組み合いを始めた

彼女の眼の端から水滴が零れた


「あんたらに何が分かるんだ!!」


悲痛な  叫び






見ないでよ  見ないでよ



お願いだから見ないでよ



そんな目で見ないで




お願いだから何処かに行ってよ






私も 消えればいいのに



「ねえ、二人共」

「何だ?」

傷だらけの柊と

「・・・ぅえっ、何?」

しゃくりあげる雫に  私は言った




「一緒に、



    消えない?」








「――ニュースです。 只今アパートの屋上から落下したうちの一人の女の子は、ミメイという子だと思われます。後の二人は今調査中です。速報です、速報で―――」


■作者からのメッセージ


逃げ場のない絶望をイメージして書きました。 

感想お待ちしております。

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