Atonement 0.5 颯慈に刻まれたカケラ |
作者: lie 2010年03月25日(木) 15時33分46秒公開 ID:te6yfYFg2XA |
子供の頃、誰よりも大切で愛おしい存在がいた気がした。 遊ぶときも、怒られるときも、お風呂に入るときも、寝るときも…。 どんなときも一緒でそれが普通なのだと思っていた。 あの時も…。 第0.5話 颯慈に刻まれた 『…僕が…を守ってやるからな!』 暖かい光に包まれた野原。 俺は肩まで伸ばした艶やかな黒髪の男の子に向って言った。 『…く…ま………よ…』 顔は影になって見えず、声も上手く聞こえない。 それなのにすごく懐かしいと思った…。 “懐かしさ”は幸せなモノだけでは無かった 黒で塗りつぶされた世界を夢中に走っていた。 血の臭いのする生暖かい風が生々しく頬を撫でる。 脂汗で湿った左手はあの子供の手首を握り締めている感触がする。 細くて頼りない白い手首を強く、爪を食い込ませながら走った。 どれくらい走ったのだろう。握り締めていた手首がするりと離れていった。 振り返ると闇に浮かぶ2つの金色の光が倒れた子供に襲い掛かろうとしていた。 『――……ッ!!』 俺は無意識に倒れた子供の名らしきものを叫びながら突き飛ばし自ら喰われた。 顔も見えない、声も聞こえないあの子供を、本能的に守りたいと思ったから……―― |
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