狂物語>冒頭1>血塗られた手
作者: ハル   2010年04月30日(金) 22時51分21秒公開   ID:m5M8TG0eh.A












――――コロシテヤル!――――









そう言ったあいつは俺に刃を向けた。

狂気に満ち溢れるその表情は、俺を殺すことだけに集中しているようだった。

あいつがやるはずがないことを、あいつがやっている。





アリエナイ!アリエナイ!アリエナイ!

アイツガオレヲコロソウトシテルナンテ!




しかし突きつけられるのは現実。

思いっきり俺の肩を矛先が貫いた。

叫ぶ俺の声を他所にあいつは笑っている。

狂気に満ちたあの笑顔。

思い出すだけで寒気がする。

あいつの後ろで笑っている奴らもいる。





俺達は檻の中・・・。





この前まで一緒に遊んでいたのに・・・。

何で?

なんで?

ナンデ?






タスケテ


コロシタクナイヨ




ウソダトイッテ

ユメダトイッテ




アイツハイツモヤサシカッタノニ・・・




すると俺の目にはあいつが敵に見えてきた。

自分に障害をもたらす何かに見えた。

気づいたら俺はあいつに殴りかかっていった。



あいつの手から滑り落ちる光る物。

俺はそれをすぐさま持ってあいつを貫いた。



飛び散る鮮血。

行き過ぎた快感。



全身を駆け巡る吐き気。




気がつくと俺は光のある場所へ出ていた。

檻の外・・・。

俺の隣にあいつはいない。

服は清潔な物に取り替えられた。

でもまだ手にはあの血の感触が残っている。

気持ち悪い。

まだ俺の手には血が付いているのではないか?



俺は奇妙な不満足さに襲われた。








そして今俺は・・・・・・






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