狂物語>冒頭2>悪魔の声 |
作者: ハル 2010年05月01日(土) 23時45分40秒公開 ID:m5M8TG0eh.A |
これからどうすればいいのだろうか・・・。 親友を殺してまで生きようなんて思わない。 俺はここで死んでやろうか? ――――大丈夫か?―――― 差し伸べられる大きな手。 光の逆光で最初は顔が見えなかった。 ってか俺は倒れてしまっていたらしい。 空腹が俺を襲う。 ――――汚いな。俺の家で風呂でも入れよ。―――― 大きなお世話だ。 ――――じゃあメシでも食うか?―――― ・・・それはもらおう。 すると男は笑う。 温かな笑い声だった。 ――――お前の格好からして元奴隷か?―――― 俺はその時自分の格好を見た。 どうみても俺の格好は清潔なものなのに・・・。 どうしてわかったのだろう。 理由はどうだっていい。 まずはメシを食おう。 人間の生存本能だろうか? すごく生きたかった。 すごく何かを食べたかった・・・。 ――――付いて来い。―――― ああ。 付いて行くさ。 付いて行くとも。 俺はこれから地獄にでも行くのだろうか? やけに上手く行き過ぎだ。 こんな差別社会で元奴隷を拾う奴なんているわけない。 でも・・・ 俺の意識は途絶えた。 気がついたら俺はフカフカのベッドの上にいた。 地獄じゃない。 だとしたら天国か? いや、でも天国と見せかけて地獄か? ――――腹減ったろ?―――― ほーら聞こえてきたよ。 これは悪魔の声か? ――――食えよ。―――― 目の前に出されるご馳走。 この悪魔はずいぶんお金持ちだな。 もう地獄だろうが天国だろうが悪魔だろうが関係ない。 たくさん食ってから考えよう。 「俺を何で拾ったんだ?」 俺は唐突に聞いた。 すると男はこう答えた。 ――――お前を養子にしようかと思ってな・・・。―――― 養子? ――――今日からお前は俺の子供だ。今からお父さんって呼びやがれ。―――― お父さん? お父さんって父親のことか? いきなり何だ? ――――お父さんって呼んで、今すぐこの家の家族になると誓え。―――― 不本意だ・・・・。 ――――嫌だったら無理やりでも・・・。―――― 誓う意味ないじゃん。 でも求めていた。 こんな会話を。 求めていた。 こんな瞬間を。 求めていた。 家族を・・・・・。 手放したくない光。 悪魔の声でもこの綱はつかむ。 たとえ夢だとしても・・・。 「お・・・・・父・・さん・・・。誓い・・・ます・・・・・・・。」 途切れた声。 頬を伝う液体。 俺はすぐに受け入れてしまった。 求めていたものを・・・。 悪魔じゃないことを祈ろう。 |
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