狂物語>本編3>ガラスの中で |
作者: ハル [Home] 2010年05月10日(月) 20時24分53秒公開 ID:m5M8TG0eh.A |
「よかった〜!この部隊に入ってくれて。ここって私を含めて変わった人しかいないから、みんな近づかないのよね〜。」 リリは軍服を着ている。 商店街にいたとき、リリは眼鏡だったが今は眼鏡を外していた。 なぜかダリアはもっとドキドキ。 「かわいい・・・。」 「ん?」 「いや・・・。」 リリは手に商店街でダリアと会ったときの買い物かごを持っていた。 「それを持ってどこかに行くんですか?自分の部屋とか?」 軍にはそれぞれの部屋があり、個々で料理したりして食べているらしい。 ちなみにダリアはそのことについてはかなりの不安を感じていた。 (料理ができない・・・) 「いいえ。これからある場所へ行くんです。実は隊長に、あなたも同じ所に就くようにって。」 隊長とは、あの黒髪の男だろうか。 案内をされているときに前から歩いてきた男である。 「・・・俺もリリさんと一緒に!?」 「うん。ちょっと変わった仕事だから、慣れるまでにちょっと時間がかかるだろうけど。」 「全然OKです。」 「そう?だったら着いてきて。あ、寒いからコートは着たほうがいいわよ。」 「?・・・はい。」 廊下を歩き、リリが石の重い扉を開ける。 するとそこには地下へ続く階段があった。 これもまた、石の階段だった。 「気をつけてね。」 リリは蝋燭を持って下へ下りる。 ダリアは息を呑み、リリの後を着いて行った。 どうやらここは牢屋らしい。 罪人らしい者達が、生気がないように座り込んだり寝込んでいる。 しかしリリはもっと先へ行く。 牢屋ゾーンが終わり、少し石の廊下を行くと ガラス張りになった部屋に 一人の人間が座ったまま縛られている。 口には麻酔のようなマスクがあった。 その人間の顔立ち。 男だろうか? 少女のような顔立ちに白い肌。 そして生気をなくした緑の瞳。 ダリアはその場に立ち尽くした。 「・・・驚いた?」 リリは淡々と言う。 「私達はこの男を監視し、あらゆる情報を吐かせるのが任務よ。」 リリは優しそうな顔に合わないくらい怖い口調で言った。 ガラス張りの部屋の中にいる少年はダリアを興味深そうに見つめた。 「・・・紹介するわ、ドール。」 この少年の名前はドールらしい。 「この人はさっき入ったばかりのダリア君。私と一緒にあなたの監視をします。」 「・・・・。」 ドールはまったく喋らない。 (まさか警戒してる・・・?) 「いつもこうなのよ。私なんて、声も聞いたことないわ。」 「そうなんですか・・・・。」 ドールはしつこくダリアを見つめる。 「あの、どうしてマスクをしてるんですか?」 「・・・それは酸素を無理矢理送り込むものよ。ドールは私達に捕まったときに、自分で息を止めて、死のうとしたの。だから、こうやってね。」 「へぇ〜。」 ダリアもドールを見てみた。 相変わらず生気がない。 するとリリが誰かに呼ばれた。 「ダリア君。私、ちょっと呼ばれたから、少しよろしく!」 「あ、は〜い。」 ダリアはドールと2人っきりにされる。 ダリアは息苦しさを感じた。 「あの・・・、何か話しません?」 「・・・。」 「喋んないと唇カッサカサになりません?」 「・・・。」 「息を止めたとき、本気で死のうと思いました?」 「・・・。」 「死のうとするのってどんな感じです?」 「・・・。」 「あなたは何で捕まってるんですか?」 「・・・。」 何も喋らない。 「・・・お前ってホントに新米なんだな。」 (あ、何か喋った。) 「はい。一応今日からです。」 「そうか・・・。」 ドールは辺りを見回す。 「・・・そっち、誰もいないか?」 「うん。」 「ちょっとこっち来い。」 「?」 ダリアは近づく。 ドールは小声で何か言った。 「何?」 「シッ!声がでかい。よく聞け。」 「・・・はい。」 ドールは同じ言葉を繰り返す。 しかし聞こえない。 するとドールは息を吐き、足を床に打ちつけた。 ダリアは目を見開く。 (・・・知ってる。) ダリアはその暗号を知っていた。 なぜドールが知っているか。 それは今はどうでもいい。 ダリアはその解読に努めた。 《タノミヲキイテクレ。》 |
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