車輪の唄〜物語〜
作者: 零堵   2010年06月06日(日) 01時20分31秒公開   ID:YynBrr2ofCI
錆び付いた自転車を漕いで、僕等は進んでいく
目的地は、明け方の駅
ペダルを漕いでると、君の背中から暖かい温もりが伝わる


(あったかいや・・・)

そして、線路沿いにさしかかり、上り坂に入る
彼女は、楽しそうにこう言ってきた

「もうちょっと、あと少し♪」

上り坂を上りながら、君はこう言っている

「世界中に二人だけみたいだね・・・」

それを聞いて、男は言葉を無くす
そして、坂を上りきり、朝焼けが物凄く綺麗に見えた

(綺麗だなあ・・・)

男は、感動のあまり涙を流す
男は、後ろを振り向かなかった、何故なら
君が笑っているかも知れないからだ


「・・・さあ、駅についたよ」

「うん」

僕等は、駅へとたどり着く
彼女は、券売機の一番端の、一番高いキップを買っている


(一体、何処に行くんだろう・・・)

男は、彼女が何所に行くか知らなかった

「じゃあ、行くわね」

「うん・・・」

彼女は、改札口にキップを入れて通ろうとするが
二日前に買った大きな鞄の紐が引っかかって、通れなかった


「・・・・」

それを見た男が、こう言う

「取ってあげようか?」


彼女は、無言のまま目を合わせないで、うん・・・と頷く
僕は、頑なになっていた鞄の紐を外す
彼女がホームに着くと、電車が来ていて
ベルが鳴っている、まるで最後を告げているみたいである
そして、電車の扉が開く、彼女は一歩を踏み出してこう言った

「約束だよ・・・必ず、いつの日か会おう・・・」

男は、答えられず手を振っていた

(間違いじゃない・・・あの時、君は・・・)

男は、大急ぎで自転車に乗って、風より電車を追いかける
錆び付いた車輪は、悲鳴を上げているみたいに音を出している
精一杯電車に追いつこうとするけど、ゆっくりと離されて行く

「泣いてただろうな・・・絶対、あの時・・・」

顔を見なくても、そう男は感じていた

(約束だよ?必ず、いつの日か会おう・・・)

男は、離れていく電車に向かって、大きく手を振っていた・・・
やがて、町は賑わいだした

「世界中に、一人だけみたいだなあ・・・」

男は、そう小さく呟いていた
そして、再び錆び付いた自転車に乗り、何所かへと進んでいく
微かな温もりを残しながら・・・

 BUNP OF CHIKEN 〜車輪の唄〜
■作者からのメッセージ
零堵です。
BUNP OF CHIKEN 〜車輪の唄〜
を物語にしてみたらこうなりました。
こういうの書くのもいいですね、たまにはw

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