夏にここで ::: |
作者: 佐奈 2010年07月10日(土) 23時55分42秒公開 ID:2EbdM0k4XrU |
「瑞姫〜、学校道具運んだらこっち手伝って〜。」 母の呼ぶ声が聞こえる。 私はまだ教科書の整頓に忙しかった。 中学校の制服は変わっていた。 襟の線は赤色でスカーフは緑と黒のシマシマだった。 アンバランスと見せかけて結構合っていた。(私のセンスだけど) 「ミズゥ、町の探検をしてきなよ。」 父だ。 父は私のことを「ミズゥ」と呼ぶ。 「ちょっとまだ、終わってないじゃない?」 母は父に反発する。 「いいじゃないか。子どもは外で遊ぶがいいさ!」 父はガハハと笑った。 私は財布を持ったり用意した。 服装は青色のTシャツに黒の短パンというボーイッシュで決めてみた。 玄関に置いてある、この町の地図を持って、玄関を飛び出した。 興味心が心から溢れそうで、顔が熱くなった。 ピーコロコロコロ!ピャーキャラララー! ゲームセンターの音が聞こえる。 私は普段なら、こんなところには近づきもしなかっただろう。 だけど、リミッターが外れたように、私はゲームセンターに入っていった。 入った瞬間にタバコの匂いが最初に来た。 少し具合が悪くなったが、あたりを見回すと感じの悪い人達ばかりだった。 私は危機を感じてゲームセンターを出ようとした。 すると3人くらいの同い年くらいの少年たちが私の周りを囲んできた。 私は強く手を握られた。 冷たく、痛い握り方。 そして私は人気のない路地に連れて行かれる。 そこで私は言われた。 「金を出せ。」 って。 財布は確かに持っていたけど、ジュースを買うくらいのお金しか持っていなかった。 「お小遣いは中学校に入ってから」と母に言われていたから・・・。 私は何をすればいいかわからなくて、キョロキョロ辺りを見た。 するとイライラしたのか、私はバッグを無理やり奪われた。 「あっ・・・・!」 私は声を出してしまった。 すると少年たちが私を一斉に見た。 全員が意外そうに私を見る。 「あ・・・財布返してっ。」 私は少年たちの手から財布を取った。 すると少年たちは癪に触ったのか私の両腕を強く握ってきた。 すごく痛かった。 それと同時に・・・ 怖かった・・・・・。 私の目から涙が零れ落ちるのを少年たちに見られようとした時だった。 私の腕を・・・、前触れもなく誰かの手が握った。 温かく、強い手だった。 その手は私を少年たちから引き剥がした。 その時少年たちの顔は青ざめていた。 私はその手の主を見ることなく路地裏から引っ張り出された。 暗い路地裏から明るい商店街に出ると、その手の主を見ることができた。 黒髪の短髪。 孤独な瞳。 私は吸い込まれそうになった。 なんかわかんないけど・・・ かっこよかった。 「・・・新しい人?」 その人は重そうな口を開いた。 私は黙ってうなずいた。 「ここの路地裏、危ない人が多いから行かないほうがいいよ。」 優しい言葉遣いだった。 その人はまだ手を握っていてくれた。 「あ、あの・・・・あたし・・・。」 私は勇気を振り絞ってお礼を言おうと思ったが、言えなかった。 その人は何も聞かずに行ってしまったのだ。 離された手が冷えていく。 こんなに暑いのに・・・・・。 |
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