ジュエルプリンセス+5 黒バラの二人 〜ツンデレと無口無表情〜
作者: 夏姫 みの  [Home]   2010年05月02日(日) 22時31分20秒公開   ID:pKbqOpuK9mo
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「あら、しゅう。久しぶりね」
由梨ゆり

 私は鈴川すずかわ 由梨ゆり。ブラックローズ学園に通ってる女子生徒。でも普通の生徒ではなく、私は特別生徒。それは……ジュエリーチェンジという力を持っているから。その事は学園内の中では、今の学園長しかしらない。付け加えるなら他校の生徒会と旧学園長の二人と私の亡き妹。
 そして図書館にて。私は旧ブラックローズ学園の生徒、五十嵐いがらし しゅうと久々に会った。今、この子は他校の生徒会の一人で私と同じく、ジュエリーチェンジを持っている。べ、別に好きではないんだから!! 特別な感情なんて一切ないし、ただの友達よ!! だって私には好きな人が別でいるんだから! 教えないけど。
 まあそんなことはどうでもいいとして、秀とは久々に話をする。まあ学園の生徒だったときは、いつも目を離しては読書だったし、そこは変わってないなとは思う。けど別学年だったし、合う回数も少ないから。

「久しぶり」
「何日振りでしょうね。……難しい本を読んでるわね。英語?」
「英語の文章の本」

 秀は淡々と答える。へぇ……。まあ秀はアメリカのロス出身だから、英語の文章ばかり書かれている本でも、おかしくはないか。

「ちょっとココで待ってて。これ借りてくる」
「え、あ、うん」

 私は呆然とする。いや、別に待たないってことは無いけど一応待つ。しばらくすると、秀がカウンターから戻ってきた。

「……空いてる? 時間」
「空いてるわ。私もただの散歩でココに着たし」

 そう。私は暇だから散歩してた。そしてたまたま入った図書館で秀を見かけた。見かけたときは声をかけたけど。すごく真剣に立ち読みしてたわ。

「カフェでゆっくりお話しよう」
「え、ああ。はい」


 思わず「はい」と言ってしまった。敬語つかっちゃったわ。いきなりのお誘いでビックリした。そして私は、秀と近くのカフェへ行く。


***


「ご注文は?」
「カフェオレで。由梨は?」
「キャラメルマキアートでお願いします」
「はい、かしこまりました。カフェオレと、キャラメルマキアートですね。少々お待ちくださいませ」

 お姉さんは営業スマイルをして、去っていった。私も暇さえあれば、ここに来てキャラメルマキアートを飲みに来る。ココのキャラメルマキアートは美味しい。図書館から歩いて3分ぐらいだから、図書館帰りで寄る人も少なくは無いわね。

「妹さんの具合はどう?」

 秀には妹さんがいるらしい。でも妹さんはジュエリーチェンジという宝石の力を使いすぎて、体に大きな傷……重症を受けて死んでもおかしくない状態から、なんとか命を取り留めたという。奇跡だ。

「電話では元気な声が聞けている。もう日本に行けそう」
「それはよかったわ。日本に来るのね」
「来年の冬休みあたりには」
「まだ当分、先の話ね。秀も向こうロスに戻るんでしょ? 今月中に」
「来週」

 来週?!
早いわ。もう来週なのね。……そういや、夏休みも来週で終わりか。早いわね、時間って。

「そのときには、姫様プリンセスたちとはお別れになる」
「そう。……寂しくなるわね」

 姫様とは、ジュエルプリンセスの草柳くさやなぎ 叶氣かなきのこと。ジュエルプリンセスは、ジュエリーチェンジに関してはすごい力の持ち主。簡単に言えばトップ。その子は秀と同じ学校の生徒なんだけど、私の亡き妹の友達でもある。

「秀のお父様も頑張るわね。行ったり来たりで」
「ああ。……父は世界的にも有名な医者だから、仕方が無い
「そうなの」

 秀の父は有名な医者だ。しかも、ものすごく世界的にも有名で知らない人は、いないと思うぐらいだ。それで家族……病気の妹さん除き転々としてるとのこと。
 その時、注文したカフェオレとキャラメルマキアートを運んできた、お姉さんが来た。

「失礼します。ご注文のカフェオレと、キャラメルマキアートでございます」
「はい」
「では、ごゆっくりどうぞ」

 女の人は去っていった。いい匂いがする。

「砂糖は?」
「いらないわ。これだけで十分甘いし」
「そう」

秀は少しだけ砂糖を入れた。なんか意外だ。

「ブラックローズ学園はどう? 学園長は?」
「夏休み明けに新しい学園長が就任してくる予定よ。今まで女の学園長だから、きっとまた女の学園長でしょうね」
「へぇ」

私はキャラメルマキアートを飲んでから言う。秀もカフェオレを飲む。

「あ。ロスに行くんだったら、どうするの?」
「どうするって?」
「姫様に……」
「ああ、その話」

 これは私と秀にしか知らない事。……実は秀は姫様に思いを寄せていた。私は本人が言う前に知ってたわ、もう行動とか顔からしてわかる。

「告白をするの? しないの?」
「するつもりではいる」
「やるわね、秀も」
「別に」

 無口無表情の秀が女の子に好意を抱く、なんて私には想像つかなかった。最初はね。でも秀もちゃんとした人間だし、好意を抱くのは当たり前か。なんだか嬉しい。
 私はキャラメルマキアートをゆっくりと飲む。

「由梨はいない?」
「えっ?」
「好きな人とか」


思わずキャラメルマキアートでムセるかと思った。

「い、いるわよ。そっ、そりゃあ私だって恋する年頃だし」
「そう」

秀はカフェオレを飲む。

「……でも、秀には昔から叶わないわ
「え?」




「テンポについていけない、って言うことかしら」




 本当に昔から秀についていけない自分がいる。置いてけぼりにされる自分が時々いる。なんだか、そんな自分が悔しい。

 私はキャラメルマキアートがちょうどいい温度になったから、最後まで飲み干した。秀も最後まで飲み干したらしい。

「昔の私たちじゃないわよね。今の私たちって」
「もちろん」

「そっか」




その分、変わったってことか。私も秀も。






でももう少しだけ、このままでいたい気持ちもある。








けど自身もって変わらないといけない。





……私も頑張らないと。そして変わらないと。






「行く?」
「ええ。なんか少しだけ吹っ切れた」
「何が?」












「昔の自分と、置いてけぼりにされている自分に」










「……そう」












――頑張れ、秀。そしてまた冬に会いましょう。





Fin








⇒To Be Continued...

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