作戦会議中です。 |
作者: 神田 凪 2010年08月07日(土) 16時17分07秒公開 ID:Fpk3UqE6X6I |
「夏だぁ!!」 俺達は集まっていた。 辺りには仲間がたくさんいて、みんなそれぞれが興奮を抑えきれないようだ。 気持ちは分かる。なんたって、一年で一番はしゃげる季節だからな。 俺達、幽霊には。 作戦会議中です。 「え〜、諸君。待ちに待った季節がやってきた。この一年間皆、思い思いに過ごしてきただろう。新技を考えついた者もいるかもしれない。とりあえず、毎年恒例の作戦会議を行いたいと思う」 そう切り出したのは、俺達のリーダー前田さん。 幽霊歴80年のベテランだ。 ああ、俺はまだ新人幽霊です。 高原とお呼びください。はい。 俺達の家、3丁目のお墓には総勢30人の仲間がいます。 みんなそれぞれ自分のお墓に座っています。みんな顔が真剣だ。 ええ? 何をそんなに話し合うのかって? もちろん、肝試しの脅かし方法だよ。 「俺達は学校さんのように、メインのお化けがいない。つまり、キャラクターで脅かす事は難しい。昨年は6丁目の所に負けたからな。今度こそ、俺達の家が一番怖いんだってことを証明するぞ!!」 「「「「 おおーーーーー!!! 」」」」 拳を突き上げるみんなの姿。 やっぱり夏じゃないと盛り上がらないよな。 冬の時なんか、みんなで暇つぶしにUNOとかやってたけど、すぐ飽きたし。 俺達の存在意義って、やっぱりこれだと思うんだ。 「えー、しかし問題があります。ここに肝試しに来てくれる方達がどのくらいいるのか・・・。去年はたった16組でした。少子化の影響でしょうか、子供達が来てくれません」 「ってか、恋人同士でとか来るなって思うよな」 「そうそう。俺達を道具にしてラブラブになろうって魂胆だろう? マジやる気失せるし」 「はっ、独り身は寂しいね。それぐらい良いじゃないか、だから彼女出来ないんだよ」 「お前に言われたくないし」 「ふふふ、」 「・・・!? ってお前まさかっ」 「あれ? 分かっちゃった? 実は俺、1丁目の野宮さんとついに・・・ね?」 「野宮さんってあのマドンナのか!!? ふ、ふざけんなよ! 俺も好きだったのに!!」 「はーい、そこ、話がずれているんで後にしてください。野宮さんについては俺も超好きなので、お前後で覚えておけよ」 □ □ 「俺達の服さぁ、毎回同じじゃん? たまには、違うの着たいよね」 「ああ、白の着物だもんな・・・。頭のこれって意味あんの?」 「なぁなぁ、逆にピンクとかにしたら怖くね?」 「ああ、怖いな。違う意味で」 「怖いって言うか、ひくよね。何か嫌な空気になりそうじゃない?」 「難しいな、怖がらせるって」 「今時の子供は現実的すぎるらしいぞ」 「どうする? 俺達のこと見て、怖がらないで真顔で「で?」とか聞かれたら」 「俺、絶対泣くな」 「何か想像しただけで泣けてきた」 「つーか、鈴木んとこのお供えって豪華だよな。俺のとこなんて花しかないぞ、しかも造花だし」 「花があるだけマシだろうが。見ろ、この殺風景を」 「お盆には来てくれるかな?」 「さぁな、でも出来れば酒持ってきてほしいな」 「最近さ、ノンアルコールの酒出たらしいぜ」 「マジで? 時代は変わるなぁ」 「発泡酒も人気らしいぞ、今不景気だから」 「・・・あのー先輩方」 「どうした高原」 「結局作戦会議はどうなったんですか」 「あー・・・、高原お前なんか特技ある?」 「一応首を360度回せます」 「地味に怖くていいじゃん。じゃあ、お前がトップバッターってことで」 「はい?」 「じゃあ、作戦会議終了ー」 毎年恒例の作戦会議という名のただの井戸端会議。 3丁目が6丁目に勝って町内一になるのは、当分ないと思います。 高原 おわり |
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