江戸組っ!第一章 #12 絆
作者: ちびハチ公   2010年08月17日(火) 13時18分36秒公開   ID:MRiX6gH5OZ6
 その人の姿を見て慌て始めた狼耳の良。と突然狼耳の良の姿が完全なる狼となった。
「残念だったな、狼ロイ!宿主の体を使った事が間違いだったんだよ!ケッ」
黒い足袋に草履(ぞうり)。青い袴。腰に差しているのは二本の刀。そして肩までも満たない短い黒髪。それは・・・。
「良!」
「よ、龍馬!」こちらに振り向いて白い歯を見せた笑顔。女の子っぽくない、良らしい笑顔だ。
「俺の中に宿ってたくせに俺の性格把握してなかったのか?まぁ、言ってやるよ。俺はこの事にケリをつけるために戻ってきた。中途半端は嫌いな性格なんでね」
そうだ。良は本当に中途半端が嫌いな奴だ。誘い神の事も、あの世に送らなかった事は無い。学校でも、課題は自分が納得行くまで、いくら期限が過ぎても出そうとしない。それでいつも関心・意欲・態度はあまり良い成績じゃない。でも、こういう場面では役立つ。
 「さて、勝負といきますか」
そう言って良は二本の刀を出した。いつもの良だ。
「炎刃(エンハ)覚醒!」
 良が持つ刀が炎に包まれた。焼かれている訳ではない。炎が良の刀を守っているのだ。『雷刃覚醒』の時に何度も見た。でも、『炎刃覚醒』なんて聞いた事が無い。いつからこんな事が?
 「まさか・・・ホウオウの力か?!」
狼ロイが言った。
「ああ、そうさ。ホウオウからもらった!」
良はニヤリとして言った。
 これで謎が解けた。良はホウオウ、という鳥ポケモンの背に乗ってやってきた。だからあんな大規模な爆発を起こせたんだ。
 「ダブルスウォード・バーニングドラゴン!」
良の刀の炎が龍となってロイ達を襲った。ロイは僕の弾を吸収したように炎の龍を刀の中に吸収しようとした。が、ロイの刀が黒くなった。
 「残念だったな。炎の龍には厄介なものを封印する術を組み込ませてもらったぜ」
良はまた、不気味な笑顔だ。
 と、突然良が短刀を僕に放り投げた。
「龍馬。アラレ達の鎖をそれで取れ。その間に俺は奴らをぶっ潰す!」
「OK!」
 やっぱりこのコンビで物事をやるのが最高だ。良が自己中に見える時もあったけど、結果的にコンビで動いてる。
 良は城主達のほうに、僕はポケモン達の方に行った。僕は短刀を取り出し、5匹を鎖から解放した。ポケモン達を良が仕掛けた戦いに巻き込まないために、僕はサトシ達の方に戻った。
 いつの間にか、良と城主達の戦いは終わっていた。そして城主達の姿が無く、誘い神だけしかいなかった。良は空中で体を回転させ、しゃがんだ状態で地についた。見るたびに、良の運動能力の凄さに圧倒される。
「良。あの城主達と誘い神、隔離できた?」
「そんな事、する必要もなかったぜ」
僕は驚いた。何で隔離する必要が無かったんだ?その時、僕はさっきの良が言い放った事を思い出した。
『その間に俺は奴らをぶっ潰す!』
「まさか、あの城主達って・・・」
「当たり。奴らは変装してただけも同然だったのさ」
僕は納得した。良がダウンするほどポケモンの力が強かったのは誘い神が直接洗脳してたからか。
 「さて、シメといきますか」
「『数多の力よ、我に力を!』」
良が刀を天に掲げそう叫ぶと、ポケモン達が良の刀に向かって間接攻撃を仕掛けた、様に見えた。その攻撃の様なものは良の刀の先に集まり、一つの七色の玉になった。
「レインボー・ライズ!」
そう叫んだ良は、刀の先をロイ達に向けた。七色の玉はロイ達を襲った。
 七色の光が消えると、そこにロイ達はいなかった。これで若草の、いや、世界の歴史が改ざんされる事は無くなったんだ。
 結界のような物が解け、跡形無く消えていた若草城は元に戻った。それを見届け終わると、良は颯爽と若草城を去った。
「ちょ、良?!」
僕らは良の後を追った。

 良は城に誘拐される前にシンジと身を隠していた、と言う家の前に着いた。とそこで良は立ち止まり、僕らの方を向いた。そして僕らに敬礼をし、こう言った。
「宮元良、只今戻りました」
僕らが『お帰り』という前にさっき解放したポケモン達が一斉に良に飛びついた。さっきまでシンジの肩に止まっていたムックルも良の方に飛んでいった。飛びついたポケモンは合計6匹。さすがの良も倒れた。
「ぐああっ!重いぃー!!龍馬へールプ!!!!!」
 僕達は唖然としてしまった。良が牢屋にいたのは半日程度のはず。それでも一緒にいたポケモン達と絆が生まれていた。
 僕は良に助けを求められている事を忘れ、笑ってしまった。
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