ring-a-ring 11 |
作者: ルーク 2010年09月25日(土) 17時43分23秒公開 ID:UIAOiqYuVxY |
「と、父さま!!」 扉からやってきたエイクの父上…モーガン氏と呼ぶことにしよう。 彼は、んー、そこまでエイクに似てはいなかった。エイクは母親似なのかな。 「エイク、元気そうじゃないか!」 「まさか、今日来るなんて思いもしなかったわ!父さまも元気そうで何より!」 エイクが弾んだ声で答える。モーガン氏も「お父さん」の笑みを浮かべている。 んー、結構すごい人だって話は聞くんだけど、ちょっとこの顔からは想像がつかない。 「ん、この子は?」 モーガン氏は俺に気付くと、エイクに尋ねた。 「この子はね、今の私の付き人!レイル。 レイル、こっちが私の父で、ダグラス・モーガン」 「は、はじめまして」 あわててお辞儀をする。ちょっと久しぶりの礼儀作法があっていたのかちょっとだけ不安だった。 普段は「友達」状態だからなぁ、俺たち。 「そうか、レイルというのか。エイクの世話は大変だろう」 モーガン氏はやっぱり笑みを浮かべたまま言う。 「いえ、エイクお嬢様はいつもお元気で、一緒にいるだけで元気になります」 「そうか。 ああ、そうだ、ロレッツォ、あれを持ってきてくれ」 いきなり声を張り上げたモーガン氏に俺はちょっとびっくりした。だけど、エイクは顔をぱあっと輝かせた。 「ロレッツォ!?じい、来てるの?」 しばらくして、いかにも「執事!」という感じのおじいさんが手に小さな箱を抱えて歩いてきた。この人がロレッツォさんかな。 「わぁ、じい!久しぶりね!元気にしてた?」 「はい、お嬢様もこの数カ月でご立派になられましたな」 ロレッツォさんはニコニコしながらモーガン氏に箱を手渡した。 動作の一つ一つが丁寧で、執事らしかった。 俺も見習いたいものだ。…とはいっても、付き人らしくしてもエイクは怒るんだが。 「ちょっと遅くなってしまったけど、誕生日おめでとう、エイク」 「わ、ありがとう!」 「母さんの形見なんだ。エイクと母さんは同じ誕生月だから、持っていてもおかしくはないだろうってね」 「なあ、エイク、あの箱、なんだったんだ?」 部屋に戻ってから、尋ねてみた。 「あ、今あけるね!」 紙がカサカサと音を立てて、中からペンダントが出てきた。 「わ、このペンダント……!」 「どうした?」 「母さまがね、生前よくつけていらしたの」 生前、という言葉を聞いて、一瞬思考回路が固まった。 そういえば、エイクの口から母親のことが出てきたことは滅多になかった。 そういうことだったのか。 「レイル、今、ショックになったでしょ」 俺の心の中を見透かしたようにエイクがいたずらっぽく笑った。 「大丈夫だよ。母さまはね、私が6歳の時に亡くなられたの。 でも、父さまもいるし、じいもいるし、叔父さまもいるし、何より、今はレイルがいるからね、寂しくないよ」 エイクが俺の目をじっと見つめながら言ったので、ついうなずいた。 「うん、そっか」 [続く] |
|
■一覧に戻る ■感想を見る ■削除・編集 |