ring-a-ring 14 |
作者: ルーク 2010年12月16日(木) 16時09分51秒公開 ID:gDpB60zr1as |
学校へ向かう途中、揺れる馬車の中で、私はこれから始まる新しい生活に胸躍らせていた。 「あっ」 不意に小さくつぶやいたレイルが、自分の右手の人差指からおそろいの指輪を抜いた。ポケットからチェーンを取り出して、指輪をネックレスのように首にかける。 「なにしてるの?」 「や、ほら、普通男は指輪しないかなーと思って。変に思われても嫌だし」 ついでに校則違反だしね、と彼は笑った。つられて私もほほ笑む。 笑った後、なぜかレイルはやばいという風に口元に手をやった。周りに視線を走らせる。 本来、従者であるはずの彼が私にタメ口をもちいる姿を他の人…とくにモーガン家の人や家来に見られてしまってはまずいのだ。 幸い、馬が道を走る大きな音にかき消されたらしく、御者には聞こえていないようだった。 「いいこと?レイル、これから私のことは呼び捨てになさい。敬語も使ってはだめよ」 とっさに私は大きな声を出した。 「は…?どういう意味でしょうか」 困惑したような口調でレイルは演技に付き合ってくれた。 しかし、顔は妙にニヤついていて、ちょっと面白い。 「だからー、私たちは三大公爵家の跡取り娘とその従者、という身分を隠して学校に通わせてもらえる、って叔父さまと父さまが言ってらしたでしょ? だから、ここであなたが従者らしくしちゃったら、ばれちゃうかもしれないじゃない。せっかく、友達を作るチャンスなのよ?」 「……。はい、わかりました」 「だからっ」 「あー、うん。……エイク」 「それでいいの!」 演技終了。ちょっとした達成感があって、私たちは顔を見合わせてにやりと笑った。 「あっ、そうだ」 レイルはごく自然に私の右手をとって、指輪をはずした。 「ちょ、何す…」 何するのよ、という私の言葉は最後まで出てこなかった。 レイルは私の肩を引き寄せて、ちょうど私がレイルにもたれかかる格好になってしまって、びっくりして声が出なかったからだ。 しばらくして、カチャリと音がした。 「エイクも、校則違反はだめだよ」 耳元でささやかれて、顔が熱くなっていくのがわかった。 「なっ…!ね、ねね、ネックレスだって、校則、違反でしょっ」 やっとの思いで言い返すと、肩の向こうでレイルがにっこり笑った様な気がした。 「ん?だって、この服だったら見えないから、大丈夫だよ」 「なっ、それって大丈夫言わないよ!!?」 冗談だよと笑いながらレイルは引き寄せた私の肩を元に戻した。 「わ、顔真っ赤」 「う、るさい」 ふん、と私は顔をそむけた。ついでに、窓を開けて外をのぞく。 「あっ、あれが学校…?」 数百メートル先に建っていたその校舎は、とても立派なものだった。 「楽しみだな」 「うん」 私とレイルは、馬車を下りて「学校」へと足を踏み入れたのだった。 [続く] |
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