#学園HERO# 10話
作者: 神田 凪   2011年01月08日(土) 16時59分55秒公開   ID:Fpk3UqE6X6I
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私は、まだ子供だ。

そして、周りいるみんなも子供。


私達は子供の役割を与えられていないけど、それでもやっぱり子供なのだ。
感情を抑えられない時がある。知識があっても経験の差で、大人には勝てないことが多い。

何をすべきか分かっている。何を優先するのか感じている。何を目指すのか知っている。


だけど、だけど、だけど、



私は、わたしは、










学園HERO 

 − story 10 −  仮面








「やぁ、ようこそ。副会長に、会長さん」


突然の生徒会の登場に、ヒーローは驚きもせずゆったりと話す。
会長こと芹沢帝はギラギラと獲物を見つけた肉食獣のように目を輝かせた。その隣で副会長の帆阪辰巳は視線を外さすじっとヒーローを見つめる。

そして、私、宮城真央はその場から動けずその様子を見ているしかなかった。



「確認するぜ。お前が“ヒーロー”だな」

確かに今までその前提で話していたが、確かな証拠がない以上ここでもし違うと言ったなら彼は逃れられる。
逆にここでそうだと言ったのなら、彼が例えヒーローではなくても生徒会がいる以上それが真実となる。


「うん。そうだよ」


間も置かず即答する。何も考えていないのか、それとも何かしらの自信があるのか、彼は・・・“ヒーロー”は逃げたりしない。


「それにしても、タイミングがばっちりだね。まるで何処かで聞いていたみたいだ」


にっこりとまるで何もかも知っている風な言い方に思わず胸ポケットを押さえた。
中には盗聴器が入っている。私とヒーローとの会話を会長と副会長はこれを通して聞いていたのだ。
あの後生徒会室で会長から渡されたものだ。私に課せられた役目は、もしも“ヒーロー”が現れた場合二人が到着するまで逃げないように引き止めておくこと。
だが、ヒーローの様子を見ていると罠に仕掛けたはずなのに、掛かったのはまるでこちらの様になってきた。
不安になって会長を伺うが、何やら呆れたような驚いたような表情をして口を開く。


「・・・お前がそういう陽気な性格だとは思わなかった。ヒーローのイメージが崩れていくぜ」


やはり、誰でもそう思うのだろう。勝手にイメージしていて勝手かと思うが、こんなにも無邪気な人が“ヒーロー”だとは普通思わない。

同意すると同時に違和感を覚えた。


「お前は『下』の奴らを・・・いや違うな、学園の奴ら全員を嫌悪していると思っていた。何も解決はしない偽善的なやり方を好む奴だったとは・・・それとも何か理由があるのか?」



だって、この言い方はまるで、


「今更『下』の支持を得たってお前には対して変わりはないだろうに。一体何を考えている?」




ヒーローの正体が分かっているみたいではないか。


嘘、待って、考えが追いつかない。会長の言うことが本当ならばヒーローは『上』の人ってことになる。
なんで、そんな人がわざわざ『下』を助けようとするの?

それに、


「まさか人助けがしたかったなんて、ふざけたこと言うんじゃねーぞ。お前みたいな奴が自分の影響力を忘れているはずがねーよな?」


会長、芹沢様がここまで毛嫌いする相手と言ったら・・・。





「なぁ、安達?」






周りが静かになった気がした。いや違う、最初から静かだった。
私の頭が真っ白になったのだ。何も考えられず、何も思えず、何も分からない。
息をするのも忘れそうで、必死に酸素を口にいれる。

安達、安達って・・・
分かっているのに、考えることを頭が拒否する。
芹沢様は今、何て言ったのだ。その言い方では、あの安達様が“ヒーロー”の正体ってことになる。

ガクガクと膝が震える。今にも崩れてしまいそうだ。
ヒーローは黙っている。芹沢様はこちらを一瞥して、すぐに視線を戻した。
帆阪様は静かに芹沢様の後ろに立っていた。その様子では知っていたのだろう。表情は変わらない。


「こいつが今、どんな状況かもちろん知っているよな? どうしてそうなったのかも」


ピタリと震えが止まった。いきなり思考がクリアになる。
これは、私の、話だ。





「お前の責任だ。安達」








ピクリと小さくヒーローの肩が揺れた。それを見て芹沢様は嗤った。












⇒To Be Continued...

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