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作者: ルーク 2011年01月11日(火) 16時24分23秒公開 ID:gDpB60zr1as |
「で、何して遊ぶ?」 めったに人が通らない、裏庭に移動した彼らは、日かげに腰かけた。 しばらく考え込んだエイクは、嬉しそうに「かくれんぼ!」といった。 「え?かくれんぼ?」 「うん。…だめ?いやだ?」 一瞬怪訝そうな顔をした少年を気遣ってか、エイクは眉をハの字に寄せ、今にも泣きそうな顔になる。少年はぷっと吹き出して、笑いだした。 「いや…。いいよ。やろっか、かくれんぼ」 「! ほんと!?やったぁぁ!」 顔をぱあっと輝かせて飛び跳ねるエイクに少年がほんのりと顔を赤くさせたのは言うまでもない。 「ごーぉ、ろーく、しーち、はーち、きゅーぅ、じゅぅ!!」 じゃんけんをした結果負けて鬼になってしまったエイクは木に顔をうずめて10数える。振り返ると、がらんとした裏庭が広がっていた。 ―どこに、隠れてるのかなー? 裏庭は、さして広くはないもの、すぐに見つかるわ、と思っていたエイクだったが、そこはさすがにもう勉強をある程度始めて頭のよい召使の少年とは違い、なかなか見つけることは出来なかった。 20分ほどしてから、エイクはペタンと地面に座り込んだ。 「うぅ、全然見つからないよぅ…」 風が吹いて、木がごうごうと音を立ててなる。その音が、まるでお前は一人なんだとささやいているような気がして、エイクの目には小さな裏庭がとても大きく見えた。 世界に誰もいなくなってしまったような気がして、エイクの目に涙がにじむ。 「…ぅっ、お兄ちゃーん…」 「ここだよ」 不意に優しい声がして、エイクははっと振り向く。そこにはさっきエイクが数を数えていた木の後ろからひょっこり顔を出した少年がいた。 「ごめんね、怖かった?」 エイクの目にたまった涙を見ておろおろと少年がエイクの前にしゃがみこんだ。 「うぅぅ〜」 エイクは少年の胸に飛び込んだ。 「おーい、どこにいるんだ?レイル、もう帰るぞ」 しばらく少年の腕の中でうとうととしていたエイクがはっと目を覚ますと、もう夕暮れだった。 「あ、はい!今行きます」 叫んだ少年はエイクを立たせる。 「もう行っちゃうの?」 「うん。帰らなくちゃ。元気でね?エイクちゃん」 少年はエイクの頭にポンと手を置く。触れた金髪が柔らかかった。 「あのね、お兄ちゃん」 エイクはまだ少し赤くはれた目でにっこりと笑って見せた。右手を差し出して、小指をすっと立てる。 「また、遊んでね!」 「…!」 少年は驚いたようにその青い瞳を丸くさせた。そして、エイクと同じようににっこり笑って自らの右手の小指を絡ませた。 「うん。約束する」 そして手を離して少年は声のする方へとかけていった。 ―いつか、約束が、本物になる日まで。僕は、きっと忘れないよ。 少年は心の中で呟く。彼は、名をレイルといった。 [続く] |
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