桜とチョコミントと逃走劇。 後 |
作者: ルーク 2011年01月19日(水) 16時00分09秒公開 ID:gDpB60zr1as |
「…っ」 校門を抜け出して、走っているうちに昔のことが走馬灯のようによみがえってきた。 あたしとレンは、家が隣で、生まれた日も同じだったから、小さいころから家族ぐるみで仲が良かったこと。 昔から外で遊ぶことが大好きだったあたしと対照的に、レンはあたしが外に引っ張り出さないと家で本ばかり読んでいるしおとなしい少年だったこと。 小学校の運動会の徒競走はあたしはいつも1位で、レンはいつも最下位だったこと。 宿題を2人でやってたはずなのに、あたしが先に寝ちゃって、レンがあたしの分までやっておいてくれたこと。 中学に入って、今まで授業中だけ眼鏡をかけていた彼がいつの間にか日常的に眼鏡をかけるようになったこと。 ちょっとあたしよりも背が伸びたこと。 そのせいかメガネ好きの女の子数人に告白されるようになっていたこと。 色々考え事をしていたせいなのか、今まで何度も走ってきた中で一番息が苦しい。頭の上で風に揺れている白い大きなリボンが邪魔だ。 ―このまま走って逃げても、いいだろうか。ちょっとだけ、ねぇ、 「こらぁ、待てリン!!」 現実は、そう甘くはなかったようだ。 運動が大の苦手なレンが、顔を真っ赤にして息を切らして追いかけてくる。 「やだぁ!!待たないしっ!!」 「待てし!!」 そう叫びながらも、心臓がぐるぐる回っている気分。地球と一緒ね。 急いで答えを出しても、いい答えなんか出てくるわけないんだから、あたし、頭悪いんだから、もっと時間をちょうだい! 「どこまで…っ、行く、気だよ!?」 さすがに疲れてきてしまったのか、レンの息がもう切れ切れだ。 そうね、学校の隣の山まで行こうかな。そこなら、違う景色が見えるよね、きっと。 そのままあたしは夢中で山まで走った。 ふと、振り向いたとき、 「……レン?」 そこには、誰もいない。 大事なものがなくなっちゃったみたいな喪失感がどっとあたしを襲った。 ―誰も追ってこない鬼ごっこ、か。 まったく、逃げ出したのはあたしなのに。追ってきて、捕まえてほしいだなんて。 そーいうこと、ですね…。 自覚したら、急に泣きたくなってきた。 と、その時。がしっと手首をつかまれて振り向くと、 「リンっ!!やっと捕まえた!」 レンが汗を流して、満面の笑みで立っていた。右手には、チョコミントのアイスがダブルで2つ。眼鏡は、どこに置いてきたんだろうか、つけていなかった。 「ごめんな、遅くなって。ちっちゃい頃、よくお使いの帰りに2人で買って食べたよな」 そういって1つをずいっと差し出してくる。 「あ、ありがと…」 受け取って、顔をまじめに見たらなんだか急に顔が熱くなって、レンから顔をそらす。 あ、そういうことか、逆向いてもわかることあるんだ。 何かが、大事だって。 「ねぇレン」 後ろを向いたまま、声をかけると「ん?」という返事が返ってきた。あたしはくるっと後ろを向いて、満面の笑顔でレンに飛びついて行った。 「あたしもね、大好きだよっ!」 飛びつかれたレンの瞳が一瞬まん丸くなって、顔が真っ赤になっていく。でも、彼も、私も、笑顔だった。 [Happy end♪] 〜おまけ〜 卒業式終了後。 リンの友人1「あれ、リンはー?お花交換しようと思ったのにぃ」 レンの友人1「そういやレンもいねぇぞ」 リンの友人2「もしかしてさぁ……」 レンの友人2「そーいうことかぁ…?」 友人×4「「「「抜け駆けしたぁぁぁぁ!?」」」」 「あれ、そういえば、卒業式大丈夫かな」 「あ、やべ。さすがにもう終わってるよな…」 「「あ……」」 [Happy end?] |
|
■一覧に戻る ■感想を見る ■削除・編集 |