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作者: ルーク 2011年01月25日(火) 10時24分51秒公開 ID:gDpB60zr1as |
「わー!きれいなお家だね」 「そ?ありがと、エイク!もうあんたかわいすぎる〜」 確かに、ミッツの家は決して大きくはないがこざっぱりとして隅々まで掃除がいきわたっているような小さな家だった。 素直にほめたエイクに、ミッツがぎゅうっと抱きついた。 ―どーだ!羨ましいでしょ♪ 横眼でこっちを見てきたミッツの目がなんだかそう言っているような気がする。何かむかつく。っていうかいつまで引きずってんだよ。 「?どうしたのレイル。何かおっかない顔してるよ?」 抱きつかれたまま笑顔なエイク(結構嬉しそうだ)がきょとんとした顔で尋ねてくる。 やべ、そんな変な顔してたかな、俺。 「えー?どうしたのぉ?」 わざとらしく聞いてくるミッツの顔は声とは裏腹ににやにやしている。 ―お前のせいだよっ 心の中だけで悪態をつくと、どうにか笑顔を作って俺は首を横に振った。 「んー、大丈夫」 「そう?よかった」 エイクはまた笑顔になると、再びミッツとじゃれあい始めた。 「はぁ…」 ため息しか出てこない。まったく、早くレイトのやつ来ないかな。 あいつは、ミッツの家のすぐ前で「じゃあ先行ってて」と言って自分の家に姿を消してしまった。もうそろそろ来てもおかしくないのだが…。 「おじゃましまーす。ミッツ、母さんが夕ご飯にどうぞって」 ちょうどいいタイミングで入ってきたレイトは、入ってくるなり籠をつきだした。 「お、いらっしゃいレイト。やったぁ、おばさんの手作り?」 ミッツはエイクから離れると、レイトが持っていた籠を受け取る。 「ありがとー。助かるよ。食べ終わったら籠返しに行くね」 「あ、気にしなくていいよ」 そんなやり取りをしばらく繰り返した後、ミッツが不意に声をかけた。 「そうだ、エイク、ちょっとあたしの部屋来てよ。見せたいものがあるんだ」 「なになに?何かかわいいやつ?」 「そう、来て!」 「わ!楽しみ。行く行く!」 またきゃいきゃいとはしゃぎながら、女たちはリビングから姿を消した。ミッツはドアを閉める直前、俺たちの方を振り返ると、 「ま、くつろいでいって。何か用があったらレイトが家のことは知りつくしてるから。じゃ」 とだけ言ってドアを閉めた。 そのあと、普段無口(どころか普段は空気)なレイトと、何が起きたのか今位置把握できずに固まってしまった俺が残された。 静寂が流れる。 「レイル、僕、今日見てて思ったんだけどさ、いい?」 しばらく沈黙が続いたと思ったら不意にレイトがぽつりと言った。 「ん、なんだよ、藪から棒に。いいよ。話にもよりけり、だけど」 そう聞いたレイトはほっとしたように口元をゆるめると、意外ととんでもないことを口走った。 「エイクってさ、あれじゃないの。三大公爵家のモーガン家次期当主」 「………!なんで、そう思った?」 「や、ただの勘違いだったらいいんだ。でも、この辺りにはモーガン家の分家があるって聞いてて、しかもここ近辺にはちょっといない名字だろ?だから…」 レイトって意外と頭いいんだな。 不意にそう思った。そう思っている暇はないというのに。 でもまぁ…ここまで推理されたらうそはつけないよな、友達だし。 「ん…。レイト、絶対に誰にも言わないって、誓えるか?」 「うん。レイルもエイクも僕の友達だよ。君たちを困らせるようなことはしない」 その言葉を信じて、俺は語り始めた。 「お前の言った通りだよ。エイクは…モーガン家の次期当主だ。今は本家を立て直す間だけっていう話でこっちにいる。それで、俺はもともとこの分家に拾われた召使で、エイクがいる間は彼女の付き人に指名された。 彼女は、恭しい振る舞いを嫌っているんだ。だから、俺もいきなり敬語ダメって言われてびっくりしたよ。ちゃんとした友達がいなかったんだ。 それで、本家のモーガン氏とエイクの叔父上が話をして、この学校にお忍びで通わせることになった。俺もボディガードっていうことでここに年を一つごまかしているんだ。 でも頼む。これを俺が話したってこと、エイクには勘付かれないようにしてくれないか?レイトとミッツは、彼女にできた大切な友達なんだ」 「……やっぱりそうだったんだ。僕、噂にモーガン家には変わりもののお嬢様がいるって聞いてたんだけど、やっぱり変わってるんだね。…あ、こんなこと言ったら失礼かな」 「いや、大丈夫さ」 「いいよ。僕、今まであんまり友達っていなかったから、君たちと友達になれてうれしいんだ。せっかくの友情を壊したりはしないよ。約束する」 「それを聞いて安心した」 安堵した俺たちはしばらく笑っていたが、あ、そうだ、という彼の発言にまたしても驚いた、というより…。 「まぁ、君が彼女を好きになった理由がわかったような気がしたよ」 「……!?」 今度は俺の顔が熱くなっていくのを感じた。 「あれ?そうだろ。気づいてないのかもしれないけど、君は僕から見たらだいぶエイクのこと好きそうなんだよ?知らなかった?」 「う、嘘だろッ!?」 いやぁ、こんなところで嘘はつかないさとレイトは頼りなさげに笑った。 いや、確かに俺はエイクのこと好きだけど! まさか、エイクもこのこと…? 「いや、エイクは結構鈍感さんみたいだからね。全然気づいてなさそう」 「はーっ、それを聞いてちょっと安心した。そんなにばればれだった?」 「うん。ミッツも気づいてるよ、たぶん」 あぁ、なるほどね。だからさっきあんな眼をしてみてたわけか。 本当は、まず俺が彼女を好きになってしまったというところに非があるのだが、まだまだ子供だった俺は、そんなことに気づきもしなかった。 [続く] |
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