おとーさんの厄介な遺産 2
作者: ルーク   2011年02月07日(月) 15時09分42秒公開   ID:gDpB60zr1as
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私がここ九重家で過ごす初めての土曜は、正直疲れた。
美香さんが、私の生活用品を何から何まで買ってくれたからだ。

「ほんと、すみません…」
「あら、いいのよぉ。私、実は女の子ってずっとほしかったの!だから、女の子のもの買うのって何か憧れてて!もう、ほんとに遥ちゃんが来てくれてよかったわぁ。ねぇ奏多?」
「え、ぶっちゃけ俺はどうでもいいんだけど…」
「あら、奏多、あんた昔はよく『お姉ちゃんか妹がほしい』って言ってたじゃない!」
「昔のことだろ!今さら蒸し返すな!!」

ほんと、ここの親子は仲いいな、と思う。奏多は年頃の男の子に多い「お母さんと話したくない」っていう態度をちょっとは取ってるけど美香さんのスキンシップになんだかんだで乗ってるもの。

家族…かぁ。

私はまだ九重家の家族にちゃんと慣れていない気がする。多分、私がまだ遠慮してるから。でも、いつか、この2人に乗れるような家族になりたい。


「わー、なんかモノ増えたな、この部屋」
日曜日、ベッドやら箪笥やら机やらでにぎやかになった私の部屋を見て奏多が感心した。
「うん、なんか部屋らしくなったね」
っていうか、なんで奏多が私の部屋に来てるのよ。

私今勉強中なんですけどーっ!

「まーまー、いいじゃん、明日からテストだからって」
「だからまずいんじゃん!!」

そう。実は、明日から中間試験が始まるのだ。一応勉強はちゃんとしてきたし、燃えてないノートのほうが多いんだけど…。ただ、

「うわ、この間の数学の小テストじゃん。50点て…!」
ファイルから勝手に人のものを引っ張り出すんじゃない!!馬鹿奏多!
「ひどいっ!数学ができないだけだもん!国語と英語は出来るし!」
「理科は?」
「えっとー、生物とかなら…」
「結局計算できないんじゃん」
「う……」

結局何も言えずに私は黙りこむ。奏多が勝ち誇ったように笑うと、勝手に人のベッドの上に座った。
「でさ、実は来週の日曜、母さんの誕生日なんだよね」
「美香さんの?」
うん、と奏多はうなずいた。
「なんかプレゼント買ってやりたいんだけど、そのー、手伝ってくんねえ?選ぶの」
「んー……」
少し考えこむ。

美香さんには、ここにきてからずいぶんお世話になった。私からも、感謝の気持ちを表したいしなー…。
「ん、いいよ。いつにしよっか」
「テスト終わった土曜日」
「美香さんの誕生日の前日じゃん…。せめて水曜の午後か木曜にしない?木曜はテスト終わって休みだし。前日に決められなかったらやだよ」
「あ、それもそっか。じゃー木曜にする」

それだけ言うと、奏多は自分の部屋に帰って行った。

「あー…。もう、ほんとテストどうしよ…。数学死ぬ…」
私は一人部屋で叫ぶのだった。

⇒To Be Continued...

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