ring-a-ring 番外編 | |
作者: ルーク 2011年02月09日(水) 15時31分33秒公開 ID:gDpB60zr1as | |
*エイクside* レイルと再会を果たした誕生日の一週間後。 私たちの結婚話は急速に進んでいた。 「…やはり、早めに結婚させてレイルに我が家を支えてもらった方がいいのでは?兄さん」 「レイルは呑み込みが非常に速い。今でも問題はないと思うのだが。ダグラス…いや、モーガン君」 叔父さまと、レイルの養父であり私たちの通っていたキットリー学園の学長、キットリー氏が父さまに詰め寄る。 一方の父さまはあまり気が乗らなさそうにうなった。 「確かにあの子は頭がいい。それは私もよく知っている。それに、なによりエイクが選んだ相手だから間違いはないと思うのだが、ただ……」 「そんな早くに一人娘をお嫁に出したくない、ですか」 親ばかめ、と言いたげに叔父さまがため息をついた。 「…う」 「エイク、もう行こう」 そこで、レイルが私の肩をポンとたたいた。 「あ、レイル」 そう、私たちは父さまたちの話をただ立ち聞きしているだけだったのだ。 「さすがに他の人たちに見つかっちゃうよ」 「…そうね。行こっか」 「でもさ、結婚だなんて、まだ気が早いと思わない?」 私の部屋でお茶を飲んでいたレイルがぐふっとむせる音がした。 「…っけほ、げほっ」 「だ、大丈夫?」 「大丈夫…エイク、そういうこと言ってる君こそ気が早いよ」 「だって、気になるんですもの」 私からしたら、結婚なんていつでもいいのにな。 「そういうわけにもいかないんだろ。俺たち自身が、じゃなくて、モーガン家とキットリー家が」 「そういうものかなぁ」 「そういうもんなの。俺さ、向こうに行ってからずっと経営学とか色々勉強しいてきたんだけど、やっぱり経営者としてはまだまだ未熟だし、かといっても周りは早く結婚してほしいんだろうし」 そう語るレイルの横顔が思いのほか大人っぽくてちょっとドキッとした。 「ん?どうした?」 「え、ううん。何でもない。それより、レイルだったら?」 「俺だったら、って?」 「んー、結婚したくないのかなって」 「はぁぁっ!?」 レイルの目が大きく見開かれた。 「それは…っ」 「それは?」 じっとその青い瞳を見つめていると、歯がゆそうにレイルは目をそらして呟いた。 「……結婚したくないわけないだろ」 「…!」 こっちから仕掛けてたことなのに、なんだか恥ずかしくなって、顔が赤くなっていくのがわかった。 「…顔真っ赤」 「知ってるよ…」 そのまま私たちは黙り込んでしまった。 *レイルside* いつもは会ったら時間目いっぱいまでしゃべって帰るのに、この日はそれ以上俺たちが話すことはなかった。 何かエイク顔真っ赤だったし。俺もそれを見たらついつられて顔が赤くなっていってしまった気がする。そして気がつくと、父さんが迎えに来て、さよならになってしまった。次に会えるのは、いつなんだろう。 「レイル」 「はい」 馬車の中で、父さんが訪ねてきた。 「すまないね、何度も連れてきてしまって。疲れているだろう」 「いえ…。俺はエイクと話しているだけですから。父さんこそ、お疲れでしょう」 父さんは首を横に振った。 「いや。それで、モーガン家のご息女との結婚のことだけど」 でた。 「最終的にはお前たちに判断を任せる、ということで決まったんだが、喧嘩でもしたのか?妙に静かだったから今日は聞けなかったんだ」 「え、そうでした、か?」 まさか二人して顔を赤くして黙り込んでいたとはいえない。 「それで、日を改めてまた行くことになるかと思うのだけど、大丈夫か?」 「は、はい」 馬車は走っていく。 〜3日後〜 「それで、双方とも聞いた通り、後は2人に任せることにした。2人で最善の選択をしなさい」 と、モーガン氏に言われて、うなずく。すると、困ったことにモーガン氏、旦那さま、父さんは部屋から出ていってしまった。 どうしようか困っていると、エイクが小さく謝った。 「ごめんね、この間は変なこと聞いちゃって…」 「あ、いや、そのことはいいよ。でも……」 「どうしよっか……」 またしても流れる沈黙。 「エイクは、どうなのさ」 「どうなのって、結婚したいのかってこと?」 「そう。俺はエイクの判断に間違いはないと思ってるよ。今すぐ結婚したいのか、それともまだいいのか」 「何それ、私責任重大じゃない」 そう言いつつエイクはしばらく考え込んだ。そして、答えが出たのか、俺の目をまっすぐ見つめていった。 「私は……レイルとずっと一緒にいたいな」 え、それは、今すぐでいいってことでいいんでしょうか。 「何度も言わせないでよ。っていうか、普通プロポーズって男の人からするものじゃないの」 エイクは恥ずかしさを紛らわせるように早口で言うと顔をそむけた。 困ったなこりゃ。エイクの言うとおりだ。 「エイク」 「ん?」 ちょっと顔の赤いままエイクがこっちを向く。 「ずっと一緒にいてもいいか?ずっとそばで守っていくのが、俺でもいいか?」 エイクの顔が一気に茹でダコのように真っ赤になる。言った自分もなんだか恥ずかしくなってきた。 「はい!もちろんです。私こそよろしく」 「うん、じゃぁ決まり」 エイクはいたずらっぽく笑うと父さま呼んでくるね、と部屋を後にした。 うん、言えた。 俺は満足げに目を閉じた。 ⇒To Be Continued... |
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