おとーさんの厄介な遺産 4 |
作者: ルーク 2011年02月14日(月) 16時32分41秒公開 ID:gDpB60zr1as |
「……はぁ」 もう、ため息つきすぎでしょ、私。 本日何回目…だったかな。数えてないわよ、そんなの。もぅ。 何でだろ。なんか胸のあたりがもやもやする。 そういえば、麻里も奏多のファンだっけ、と思った時、その胸のもやもやの原因がわかった気がした。と同時に、なんだかちょっと恥ずかしくなった。 そっか、私、奏多にやきもちやいてるんだ…。 お母さんが違うとはいえ双子なのに、しかもお父さんは若い頃そうとうモテた(らしい)し、奏多は現にモテてる。なのに、私は、いたって普通。 告白されたことないし、て言うかむしろ男の子に嫌われてそうだし、一回振られたし。 「あーもう!そんなこと言ったってしょうがないじゃん!!レベルの差だよ!」 声に出して叫んだら、ちょっとこのもやもやが晴れるんじゃないかって思って。ストレス発散、ってやつ。 ふぃー、ちょっとすっきりしたかも。ストレス発散万歳! 「なにが?」 「へ?…ぎゃぁぁぁぁッ!!」 リビングのドアの前で奏多が立っていた。 う、うそ。もう帰ったの!? 「何で叫ぶかな。俺化け物じゃねぇし」 「お、おおお、おかえりなさい。早かったね。もうちょっとデート楽しんでくればよかったのに」 「別にいーよ。買い物疲れた。あと、遥一人に料理任せて後でもう一回作り直すのはもっと疲れるから」 うっわ、さりげなく失礼なこと言ったよ、こいつ。 「失礼っ!私そんなに料理下手じゃないもん!」 お母さんが帰り遅かったから料理作ることはよくあったし。 「へー、意外」 「何それっ、私を不器用だと思ってるわけ!?」 「そうだと思った」 「……」 ま、そういうことなら遥に任せる、と言って奏多は階段を上って行った。 「あ、奏多!」 「んー?」 階段を上る足を止めない。もうしょうがないなぁ、私は奏多の後を追いかけた。 「今日、何食べたい?」 「え、…何でもいい」 「えー?それじゃ困るよ。……じゃぁ、好きなものは?」 「……肉じゃが?」 え、なんですかそのクエスチョンマークは。 「じゃぁ肉じゃがにする。ちょっと買い物行ってくるよ」 豚肉と、ジャガイモと、玉ねぎと、人参と、しらたき! 買いに行かなくちゃ。 階段を降りかけた私は体が前に進まずにつんのめりそうになった。 「きゃぁっ?何してんの?」 奏多が手首をつかんでいた。 「遥、お前さぁ、自分モテないと思ってんの?」 「え、何よいきなり」 「別にいいじゃん、答えろよ」 何でそんなこと答えなきゃいけないのよ! 「答えないと放さないけど。買い物行きたいんでしょ?」 「……ほんとサイテー…。 そうだけど。だって、奏多は彼女いるし、ファンクラブとかあるし」 答えると、奏多がくくっと笑っていた。 「ちょ、何よ…!」 「や…、お前って、超鈍感なのな」 「はぁ!?どーいう意味よ、それ!てか手ぇ放して!」 あぁごめんごめん、と笑ったまま奏多は私の手を放す。 もうわけわかんない。私は首をかしげながら階段を下りていった。 私がいなくなった後の階段で、奏多は最上段に座り込んだまま声を押し殺して笑っていた。 「マジで鈍感だわ、何で気づかないんだか…」 もちろん、その声は、私には届かなかったけど。 [続く] |
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