おとーさんの厄介な遺産 7
作者: ルーク   2011年02月20日(日) 13時27分42秒公開   ID:gDpB60zr1as
「あ、おはよっす。健人。早いのな」
久しぶりに奏多と登校した。
教室には夏目君一人が座っていた。
「おはよ、奏多。…あ」

夏目君がこっちを見てニコッと笑った。
「おはよ、高橋さん」
顔が熱くなった。
「おはよう、夏目君」



「え、じゃぁ夏目が遥の彼氏なんだー」
昼休み、教室で麻里と、教室に乗り込んできた里香ちゃんと3人で机を並べてお昼を食べているときに2人にその事実を報告した。
奏多には昨日家で言った。
まぁ、なんか反応はあっさり「へえ、そうなんだ。よかったじゃん」だけだったけど。なんか知ってたのかな?奏多と夏目君は仲いいし。
「へぇ、よかったね!!夏目、結構優しいって評判らしいし、すごい頭いいっぽいよ」
麻里の言葉に里香ちゃんがうなずく。
「そーそー。地味だけどいいやつだよ」

どうやら、里香ちゃんと奏多と夏目君は出身中学が一緒らしい。奏多と夏目君の過去話を聞いて、麻里と2人して笑った。
「奏多はどっちかっていうと天才肌なのよ。でも夏目は秀才でね、テスト前になるとすごい勢いで勉強してたの。
 で、ある日、『見てるこっちが暑苦しい』って奏多が夏目連れて遊びに行ったことがあったの。それでね」
そこまで言って、里香ちゃんが思い出したように笑いだす。

「それで、どうしたの?」
「聞きたい聞きたい!!」
「夏目が…」

「俺がどうしたの?」
言おうとした里香の言葉をさえぎったのはきょとんとした顔の夏目君だった。
「夏目!!何でここにいんのよ?」
いや、それこっちのセリフだから、と夏目君が笑う。
「平田の教室じゃないだろ。
 それより、ちょっと高橋さんに用があるんだけど、借りていい?」

夏目君の言葉に、里香が食いつく。
「ちょっと待ってよ、あんた彼女なのにまだ苗字にさんづけなの!?」
「え…?」
「相変わらず情けない男ね〜」
「ちょ、ちょっと待てよ。俺彼氏っていっても昨日からだし、それまで関わりなかったからまずいかなって思ってただけなんだけど!!」
ちょっとちょっと。夏目君。全部ばらしてどうすんの、と私は心の中でひそかに突っ込んだ。

「あっそ、じゃあ、早く名前で呼んであげたら?何か不自然だよ」
「余計なお世話だな。
 とりあえず高橋さん借りるから!!」
頬を赤く染めた夏目君は私の手をとって廊下に出た。

「ちょ、夏目君、どこ行くの?」
「屋上?」
「え、屋上って立ち入り禁止じゃないの?」
「俺スペアキー持ってるから、大丈夫」

そういう問題だろうか。

ただ、夏目君はうそをついたわけではなかったらしい。屋上について彼はポケットから鍵を取り出して、屋上への扉を開けた。

「1名様、ご案内!」
にっこり笑うと、夏目君は私を屋上にいざなった。
「わーっ、すごい眺め!!」

うちの学校は、結構高台にあって、屋上から下の町がよく見下ろせた。
「今日、高橋さんにどうしても見せたかったんだ」
はにかんだ夏目君が屋上の扉を閉める。錆びた蝶づかいがぎぃっと音を立てる。

「あのさ」
「ん?なあに?」
私はフェンスにもたれかかって彼を見つめた。一瞬だけためらって、夏目君が訪ねた。
「…遥、って呼んでもいい、かな?」
「…え?」
「や、あの、ダメだったらいいんだけど、その…」
夏目君の顔が真っ赤になった。
「え、もしかして、里香ちゃんの言ったこと、気にしてるの?」
「……や、女の子としてはやっぱり彼氏にはそう呼ばれたいのかな、と思って」
ほんとは今日言うつもりだったんだよ、平田が余計なこと言うから…とかなんとかごにょごにょ聞こえた。
笑みがこぼれた。

「いいよ、健人くん」

「え…」
その時、チャイムが響き渡った。
「教室戻ろ」
「あ、うん」
しばらくぼうっとしていた彼だったが、すぐに私の手を掴んで、
「ありがと、遥」
とはにかんだ。

            [続く]
■作者からのメッセージ
こんにちはー、ルークです。
夏目君かわいい…!!こういうかわいい男の子書くの好きです(´艸`)

もうそろそろ夏休みかな…(季節が真逆www)
では、また今度!

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