おとーさんの厄介な遺産 10 |
作者: ルーク 2011年03月02日(水) 13時27分33秒公開 ID:/hwzrwQSwKU |
午前7時半、私と奏多は待ち合わせ場所で鞄を抱えて立っていた。 「遅いねぇ、健人君も里香ちゃんも」 「そうだな……」 それは今朝の5時のことだった。 いきなり麻里から携帯に電話がかかってきた。 『あのさぁ?私、なんか風邪ひいちゃったみたいなんだ…』 そういった麻里の声は鼻声気味で、時折咳が混じっていた。 「え、大丈夫!?」 『んー、夏風邪だと思うんだけど。 で、この調子じゃ旅行いけそうにもないから、みんなに言っといてくれる?』 「うん。お大事にね!お土産買ってくるから!!」 『期待してる』 鼻をすする音まで聞こえてくる。 大丈夫かなぁと心配しながら私は電話を切った。 「あ、遥ー!!!奏多ー!!おっはよー」 通りから、里香ちゃんが走ってきた。 「おはよ、里香ちゃん」 「うす。今日はよろしく」 「りょーかいですっ!あれ?夏目と麻里は?」 きょろきょろと里香ちゃんが辺りを見回す。 「麻里、風邪ひいちゃったみたいで、パスだって」 「あら!大丈夫かなぁ…?」 残念だな、と里香ちゃんがため息をついた。 「あ、夏目だ」 向こうから、健人君があるいてきた。 「おす、健人」 「おはよ、夏目」 「おはよう、健人くん」 「おはよー、みんな。 …あれ、山本さんは?」 「風邪でパス。 よし、じゃあこれで全員そろったね!行こっか」 里香ちゃんが嬉しそうにうなずいた。 新幹線に乗って30分。私たちは人里離れたいかにも「別荘!」って感じの別荘にたどりついた。 「うわぁ!!キレーイ」 「でしょ?この間掃除した時に備品そろえておいてくれたから、多分モノはあると思うよ。 で!部屋割を発表しまーす」 里香ちゃんが得意げに一枚の紙を出した。 奏多が白い目で見る。 「お前が勝手に決めたのかよ」 「当たり前でしょー?麻里が来ないのが残念だけど…。 えっと、夏目と奏多が同じ部屋で、私と遥が同じ部屋だから!」 今案内する、と里香ちゃんが先頭に立って歩き始めた。 「へー、珍しいね。平田さんのことだから奏多と同じ部屋が良かったんじゃないの?」 健人君がからかう。里香ちゃんは私の腕を引き寄せた。 「残念でした!私は遥ともっと仲良くなるの!」 夏休みが始まった。 [続く] |
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