正義の味方VS悪の組織<3>
作者: 神田 凪   2011年04月02日(土) 20時52分13秒公開   ID:Fpk3UqE6X6I









「お前にはとてもつらい任務を渡したな」

普段厳つい表情が滅多に崩れない上司が、何かに耐えるように震える声でそう言った。肩に置かれた右手も微かに震えている。

「どんな、結果になっていたとしても・・・そのまま報告してくれ」

それは、最悪のケースの場合を覚悟しているようだった。
我が惑星が派遣した5人の生存が確認されなかった場合だ。

「・・・これは個人的な命令だ」
「はい」

背筋を伸ばして、上司の目を見る。

「何としても、生き抜け」
「ーーっ、はいっ」





あの時をふと思い出した。
そんな事もあったなー、と数日前のはずなのに無性に懐かしい。

5人の内のリーダーに会えた。
彼の話だと、他の4人も生きているらしい。

最悪の場合を覚悟していた私達にとってこれは嬉しいことだ。
さぁ、早く惑星へ彼らの生存の確認を。




報告書

“地球”の日本にて、赤を授かったリーダーと再会。
彼の話によると他4人も生存とのこと。


追加報告

赤が結婚したそうです。
しかも、任務の最中にも関わらず農業を楽しんでいます。
というか、任務を忘れています。
性格も大幅に変わっている模様。







・・・・・・・・・・・・・・って書けるかっ!!








正義の味方 VS 悪の組織

− 緑色さん と 桃色さん の場合 −







「ああ、久しいな。惑星の皆は元気か?」


喜びで涙が出るってこういう事なのか。
前と変わらないその雰囲気。変わらないって素晴らしい!

衝撃の言葉から2時間45分後。真っ白になっていた頭を強制的に動かす。
他の4人に会いたいと赤の彼に言った所、行動早く連絡取ってくれた。

で、都合が良かったのか数十分で駆けつけてくれたのが先ほどの言葉を発した人物である。

彼は“緑”の称号を授かっている。
惑星一の秀才で、悪の組織に盗まれた科学情報の内容のほとんどは彼が関わっていると言っても過言ではない。
研究熱心で、悪の組織を倒すための武器を彼はたくさん発明している。


「お、お久しぶりです。はい、皆元気です」


これだよ。私が期待していた再会というのは!!
決して、どこの田舎少年!?てな格好でなぜか片手には大根を持っているような力が抜ける再会など、そんなもの感動の再会ではない!

ってそうだ!
何だがそれどころではなかったので、忘れていたが悪の組織だ!
彼らはどうなってしまったのか。こんなにも日常が変わっていないところを見ると、もしやもう既に彼らを壊滅してしまったのではないか。

そうだよ。それなら、赤が結婚しているわけも農業をはじめた理由も納得がいく。
平和になったのだから、彼らがどうしようと自由だ。
きっと何かの事故でこちらに連絡出来ず、帰れなくなったのだろう。


今までの不満が吹っ飛んだ。


「あ、あの悪の組織は」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ、」


さっそくその辺りを聞こうと口を開くと、なぜか相当の間があいてようやく納得したような顔をした。
イメージは『ああ、そんな奴いたっけ』みたいな


「え、あ、あの?」
「うーん、まぁ、詳しいことはあそこで話そうか」
「そうだな。あそこなら他の皆も集まるだろう」


緑と赤がそう話しているのをおとなしく聞いている。
そして、話が纏まったのかどこかに移動するようだった。
慌てて後をついていく。

「どこに行くんですか?」

「隠れ家、だよ」







何か格好いい!!















「おかえりなさいませ、ご主人様!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


「うむ。今戻ったぞ」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。




車で駅近くまで移動し、更に電車という乗り物に揺られること数時間。
いきなり人通りが多くなった町を歩き、ある建物の前にたどり着いた。

いや、何か奇抜なファッション(後にコスプレということを知る)を着た人がいるなとは思っていたが。その建物では、なぜか私達を『主人』と呼ぶ。
もしや、緑が何か上の立場に立っているのではないか。とは思ったが同じように他の人にも『主人』と呼んでいる。


「ようこそ、メイドカフェ“隠れ家”へv」


なぜか頭には猫耳をつけ、下着が見えるほど短いスカートの衣装を着込んでいる女性に緑は意気揚々と話しかけている。

隣いる赤は慣れた様子でメニューを見て注文している。
何だここは。もう一度言おう何だここは!

頭が再び混乱してきた私に赤は詳しく説明してくれた。
どうやら、ここは食事の他に特別なサービスも提供してくれる店らしい。


特別なサービス?



「にゃんにゃんじゃんけんだよぉ(>_<)」



やけに舌足らずな声に無意識に振り向く。
振り向いて後悔した。


「うにゃ!? 久し振りだねぇ、元気だったかにゃ(*^_^*)」



うぜぇ。





第一にそう思った私は悪くない。
そして、その後気づいた。先ほどの女性と同じ衣装と猫耳を身につけたその人は・・・


「あ、桃ちゃん。どうだ調子は?」
「ミドリンだぁ☆ 昨日ぶりだにゃ、毎日来てくれてありがとぉ」
「いやいや、俺が桃ちゃんの一番のご主人様だからな」


・・・・・・。
私には尊敬する人物がいた。
同じ女性でありながら、彼女は男に負けないように常に力を奮っていた。
毅然としたその態度は男に負けないくらい格好良く多くの女性ファンがいた。
そしてその実力が認められ、女性で唯一5人の中に選ばれ“桃”の称号を授かった。


それが・・・・・・。


「にゃんにゃんじゃんけんするかにゃ?☆」
「もちろんだ。今日こそ勝って、一緒に写真撮るぞ、にゃん」
「あ、俺はこのにゃんにゃんパフェ食べようかな、にゃん」
「はぁーい(^_-) 相変わらずぅ、赤ちゃん甘いもの好きだねぇv」



変わっていないと思っていた緑はどこか可笑しい。桃は言うまでもなく。
目の前の光景に今日何度目かになるが、泣きたくなった。







緑色さん と 桃色さん の場合・・・

ご主人様 と メイド だにゃ☆






「君は何頼む?」

「・・・何でもいいです」

「何か疲れているな。じゃあ、同じパフェでも頼む?」

「・・・それでいいです」

「だめだよぉ、注文するときは『にゃんv』てつけないとぉ☆」
 

「(いい加減にして欲しい!! にゃんっ)」








つづく

■作者からのメッセージ
今回続きを書くなかで、一番書きたかったのが桃色さんでした。
前回は一言も喋らなかった緑色さんと桃色さんですが、とっても良いキャラになりました。書いてて楽しいです。
彼らがいるのはもちろん秋○原です。私は一回も行ったことはありませんが。
なので想像で書いています。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
それでは。

追記:しばらくパソコンに触れない日々が続きそうです。
ですので、続きが遅くなりそうです。

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