錨 4 |
作者: Florrie 2011年07月16日(土) 19時41分08秒公開 ID:Pih3tXzNb4s |
「いいんですよ、それでも。――俺は待ってますから」 さらりと言ったカカシに、キリハは怪訝そうな顔をする。 言ってる意味がわからないんだけど、と訴える彼女の表情に、カカシは少し笑った。 「キリハさんが何処へ行こうと、――ま、一年に一回しか会えなくっても、別にいいんです。――俺に、待っている権利をください」 「……」 「それと、絶対忘れないでいてくれればいいですよ」 …俺が待っているということを、ね。 キリハの表情が歪んだ。…そんな顔は、初めて見たかもしれない、と思う。 「カカシさ…。…知ってる? 結婚するって、そんなに簡単なことじゃないよ」 「知ってますけど。でも、…俺たちの場合は当てはまらないと思いませんか?」 自分たちには、話をややこしくするような親族はいないし、…唯一反対してきそうな暗部上層部は、暗にそうしろと、カカシに仄めかしてきた張本人である。 「後悔するんじゃない?」 逃げ道をふさがれ不服そうにしながら、キリハが苦し紛れに呟く。 カカシは笑った。 「俺は、こうしないと後悔すると思ったから、言ってるんですよ」 今まで通りでいい。せめて、絶対忘れずに戻ってくると、そういう約束が欲しかったのだ。 なにも結婚でなくても――そう、思ったりもしたのだが。…ただの後輩のままでいるよりは、効果はあるか、と思い直した。 家族、という繋がりは、長いこと自分にも彼女にも縁はないものとなっていたけれど、…だからこそ、強固な繋がりとなるのではないかと、期待した。 「だから、後悔しませんよ」 ――俺はね。そう言って、彼女を見遣る。 キリハは、困ったように笑った。…実際、困ったな、と口にした。 「自信満々だね」 「ええ、もちろん。――それで。改めて伺いますけど」 ……俺と、結婚してくれますか…? ―――終り。 |
|
■一覧に戻る ■感想を見る ■削除・編集 |