生きる意味(薄桜鬼二次創作 沖千) |
作者: 林檎頭巾 2011年10月19日(水) 14時48分44秒公開 ID:CoM.9X5NVEE |
僕の命はもう長くないのに、生きていて意味があるのだろうか…… 「総司さん、失礼します」 その声で、僕は我に帰った。また…自分の生きる意味を考えていた。 そっと部屋の襖が開き、千鶴が顔を出した。彼女の隣には、薬と白湯が入った湯呑みが乗った盆が置かれている。 「お薬をお持ちしました」 そう言って彼女は盆を両手で持ち、僕の部屋に入り、そして襖をそっと閉めた。けれど僕はいらない、と答えてしまった。案の定、千鶴は怪訝そうに僕を見つめている。 「いらない…ってどういう意味ですか?」 「そのままの意味だよ。こんな苦いの、飲みたくないからね」 「で…でも……せっかく松本先生が処方してくださったお薬ですし、飲み続ければ総司さんの病気も――」 「飲んで何になるっていうの?もしそれで労咳が治ったとしても……」 ぎりっ、と強く唇を噛み、僕は続ける。 「僕が君を一人にしてしまう、って事実は変わらない。治ったとしても、僕は灰になって死ぬんだ!薬なんて何の役にも立たない……!だから、飲むだけ無駄――」 その先の言葉を吐き出そうとした矢先に、パンッ、と乾いた音が響いて左頬に痛みと熱が走り、顔が横に傾く。 僕は千鶴にぶたれた。 「何で……何でそんなこと言うんですか!?」 涙を流しながら、悲しそうな声で彼女は言った。僕は痛む頬を左手で押さえながら、苦々しく、言葉を吐いた。 「僕はただずっと寝てるだけで、千鶴に何一つしてやれない……!僕は…僕は生きてても意味無いと思うんだ!!」 「そんなことありません!」 きっぱりと千鶴が言った。 「寝てるだけでもいいんです。総司さんと一緒にいられるだけで、私は幸せなんです…」 すすり泣きながらも言葉を紡ぐ彼女を見ていると、僕の目からも、自然と涙が溢れてきた。彼女を残して、逝きたくない。 「千鶴……!」 僕は泣きながら彼女をぎゅっと抱きしめた。涙はとめどなく溢れてくる。僕は死ぬのが怖いのかもしれない。でも彼女に怖い、とは言えず、その思いが涙になっているのだ、と感じながら。 「大丈夫ですよ、総司さん。私は最期まで、貴方と一緒にいますから」 千鶴の優しい言葉が僕の心を癒してくれる。僕はさらに涙を流した。 「…ありがとう、千鶴。薬、ちゃんと飲むから。ちょうだい?」 少し落ち着いてから僕が言うと、千鶴が薬と湯呑みを渡してくれた。 僕は、彼女に必要とされている。それは嬉しいけど、少し辛くもある。 ごめんね、千鶴。僕は君を一人にしちゃうかもしれない。君を悲しませるかもしれない。 でも、これだけは忘れないで。 僕は、誰よりも君を愛してるから…… |
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