やきもち(薄桜鬼二次創作 土千) |
作者: 林檎頭巾 2011年10月19日(水) 15時58分03秒公開 ID:CoM.9X5NVEE |
机に向かっていたはずの俺は何故か 何やら話声も聞こえてくる。 「……来たよ、雪村君」 大鳥さんの声だ。どうやら千鶴と話しているのだろう。でも、来たよ、とはどういうことだろうか。 「……ます、大鳥さん」 千鶴は彼にそう返している。一体二人して何をしているのだろうか。まさか彼も千鶴の事を―― そう考えると俺は急いで身体を起こして大鳥さんに声をかけた。 「大鳥さん、俺の千鶴に何してやがる?」 「あれ…?起きたんだ土方君。気分はどう?」 にこにこと笑いながら大鳥さんが訊ねる。俺は彼を睨みながら答えた。 「…最悪に決まってんだろ。人の女に来たよ、って言いやがって」 「やだなあ誤解しないでよ土方君。僕は、雪村君に、薬を持って来たよ、って言ったんだよ」 くすくすと笑いながら大鳥さんは言った。 「千鶴に薬、って彼女の身に何かあったのか?」 俺が訊ねると、不意に千鶴が寝台のほうへ歩み寄り、怒っているような顔で俺を見つめた。 「何かあったのは土方さんのほうですよ!倒れるまで働き詰めて!」 彼女のこの言葉で、俺は、何故自分がここで寝ていたのかを思い出した。 仕事中に倒れたのだった。 「雪村君の言う通りだよ?君は働きすぎだよ」 「……」 何も言い返せず、俺は黙り込んでしまう。確かに自分は少し働きすぎだと思ったから。 「あんまり長居すると、君達に申し訳ないから僕は退散するよ。じゃあ土方君、雪村君の言うことしっかり聞いて休むんだよ」 「お…大鳥さん!?」 驚く千鶴を大鳥さんは無視して、部屋を出て行った。 部屋には、俺と千鶴の二人だけが残される。重い沈黙が流れ、口を開きにくい。 先にその沈黙を破ったのは千鶴だった。 「働きすぎて、その疲れがたまって土方さんは熱を出したんです。今日は仕事をなさらず、お薬を飲んで、ちゃんと寝てください」 少し怒り気味な口調で彼女は薬と白湯を俺に手渡した。 「すまねぇな、千鶴」 俺はそれを受け取ってから一気に薬を白湯で流し込んだ。 「あの、土方さん……」 遠慮がちに千鶴が訊ねた。 「何だ?」 「さっき大鳥さんに俺の千鶴になにしてやがる、って仰ってましたよね?あれって、私と話をしていた大鳥さんに対する焼き餅だったんですか?」 答えに困る質問を彼女はした。俺の答えは―― 「…土方さん!?」 俺は彼女を抱きしめて呟く。 「焼き餅焼いて何が悪ぃんだ?他の男と仲良さそうに話してると、焼き餅くらい焼きたくなるに決まってんだろ」 言ってから何だか恥ずかしくなり、俺は急いで抱いている彼女を離した。 「土方さんが焼き餅焼くなんて意外ですね。でも、嬉しいです。焼き餅を焼くほど、私のことを大切に思ってる、って気がしますので」 彼女は嬉しそうに笑っている。 確かに彼女の言う通り、俺は、誰よりもお前のことを大切に思っているのかもしれない。 |
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