千羽鶴 -序章-(薄桜鬼二次創作 平千 SSL) |
作者: 林檎頭巾 2011年10月30日(日) 11時51分49秒公開 ID:sTYIRFezUnY |
(どうしよう……) 私は公衆電話の前でためらっていた。彼と連絡を取るか取らないかで。 私は、彼に話さなければならないことがある。それは重要なことだ。けれど、やっぱり言いにくい。病気でしばらく入院するなんて…… 今、私は看護師さんの目を盗んで病室のある5階から1階へと降りて来た。安静にしなければならない身だけれど、学校をしばらく休む、ということは伝えておかなければならないと思ったから。 しばらく休むとなったら、彼に会えなくなる。それだったらお見舞いに来てもらえ、という話になるけど、私は来て欲しくないと思っている。彼に多大な心配をかけるかもしれないから。 だから、電話口でお見舞いに来て欲しくない、と言うのが最良の選択かもしれない。でも、私は彼に会いたい。だけど、そんな勇気はない。彼と会ったら、泣いてしまいそうだから。 そう考えたら会わないのがいいだろう。 私は意を決して鮮やかな緑色の受話器に手を伸ばした。その時―― 「痛たたた……」 不意に私の胸にズキリとした痛みが走った。精神的なものか、病気の症状の一種なのかはわからない。私は痛む胸に軽く手を当て、空いている手で受話器を取り、一旦胸から手を離し、小銭を入れた。 「ごめんね、平助君……」 私は彼に謝ってから、ズキズキと痛む胸に耐えながら、平助君の携帯番号を震える指で押した。 |
|
■一覧に戻る ■感想を見る ■削除・編集 |