千羽鶴 -一章 作戦会議-(薄桜鬼二次創作 平千 SSL) | |
作者: 林檎頭巾 2011年11月01日(火) 17時26分41秒公開 ID:CoM.9X5NVEE | |
時は昼休み。薄桜学園の屋上には、三人の男子生徒が円になって座り、弁当を食べていた。そのうちの一人を除いて。その生徒――藤堂平助はぼんやりと空を見上げている。 「どうしたの平助?馬鹿そうな顔しちゃって」 藤堂の様子を見ていた同級生の沖田総司はからかうように訊ねた。 「何でもねーよ……」 口調はいつもとは変わらないが彼にしては珍しく元気がない。 「……悩みでもあるのか?」 そう訊ねるのは、藤堂の隣で黙々と弁当を食べていた斎藤一。彼も藤堂の同級生だ。 「悩みってほどじゃねーけど……あ」 突然、藤堂の携帯電話からバイブ音が聞こえた。彼はポケットに入れてある携帯を取り出し、それを開く。どうやら電話がかかって来たようだ。 (公衆電話?一体誰が……) そう思いながらも、藤堂は電話に出た。 「もしもし、平助君?」 聞き覚えのある声が電話口から聞こえる。 「千鶴?お前、今日休んでるって聞いたけど大丈夫か?何かここ最近、具合悪そうだったけど……」 だが、その問いに千鶴は答えず、話したいことがあるの、と彼に切り出した。 「実は今、病院にいるの。平助君の言ってた通り、最近体調悪いから少し診てもらってたの。大したことない、って思ってたんだけど……」 「お前…何が言いたいんだ?言いたいことあるならはっきり言えよ」 二人の間に少しの沈黙が流れる。その沈黙の後に、千鶴が口を開いた。 「私、しばらく入院することになちゃって……学校、休まなきゃならないの。少し、長くなりそうかな」 「え?」 反射的に藤堂は訊き返していた。 「あれ?聞こえてなかった?私――」 「聞こえてたって!わかった。今度、見舞いに行ってやるよ。だから――」 「気持ちは嬉しいけど、お見舞いには、来ないで欲しいの……」 消え入るような、か細い声で彼女は言った。どういうことだよ、と藤堂が訊き返すが千鶴は答えることなく―― 「退院する時に、連絡するね」 「ま…待て千鶴……!」 藤堂の制止も空しく、電話は切られた。 私は静かに受話器を戻してため息をついた。胸の痛みは、まだ治まらない。 (これで……良かったんだよね?そろそろ戻らないと……) 私は胸に軽く手を当ててから、元来た道を引き返した。 「…もう訳わかんねーよ」 苛立たしげに藤堂は呟き、バチン、と音が鳴るほど強く携帯を閉じた。 「…電話の相手は雪村なのか?会話の内容からすると……彼女の身に、何かあったのか?」 こくり、と藤堂は頷いて電話の内容を斎藤に話した。沖田もそれを聞いている。 一通り聞き終えた後、話を聞いた二人はそれぞれ、口を開いた。 「千鶴ちゃんが……ねえ。少し心配かな?でも、あの子らしいっちゃらしいよね。平助に心配かけたくないからお見舞いに来ないで欲しい、って言ったんじゃないの?」 「そうかもしれねーけど……オレは、あいつを見舞ってやりたいんだよ。心配なんだよ。いつも悩みを独りで抱える癖があるから。きっと、あいつは、何かで悩んでると思うんだ。だからオレは、彼女と会って話したい」 心の底から思っていたであろうことを吐き出した藤堂の顔は、今にも泣き出しそうだった。 「…ならば、無理矢理会って、話すしかないだろう」 斎藤の最もな答えに、藤堂はそうだよなあ、とこぼした。 「それしか方法ないよなあ。とりあえず行くだけ行ってみるか。何か持ってってやらねーと。一君、総司、見舞いって何送ればいいんだ?花とか果物とかのありきたりな物以外で」 訊ねられた沖田と斎藤は少し考え込む素振りを見せた。 「着替えとかは?彼女に似合いそうなの見繕って。サイズは目分量で測ればいいし」 しれっと沖田が言う。 「い…いいいいや、却下!却下だかんな!!」 顔を真っ赤にして藤堂は否定し、助けを求めるように斎藤のほうを見る。 「は…一君は?」 マトモな答えを返してくれそうな彼に期待して藤堂は訊ねた。 「…石田散薬はどうだ?あれは万能薬だ。飲めば彼女の病はたちまち――」 「それも却下!!」 「いい案だと思ったのだが……」 マトモな答えが返って来ず、藤堂はため息をついた。 「どうすりゃいいんだよ……」 藤堂がぽつり、と呟いたと同時に誰かが屋上へと来た。同級生であり、保健委員の山崎だ。彼は医者の息子だ。きっと何かいい案を思いついてくれるかもしれない。 「すみません、委員会で遅れました」 「山崎君、丁度良かった!聞きたい事があるんだ」 「聞きたい事、ですか?」 そう訊ねる山崎に藤堂は先程沖田と斎藤にした質問を彼にした。 ⇒To Be Continued... |
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