千羽鶴 -二章 作戦開始-(薄桜鬼二次創作 平千 SSL)
作者: 林檎頭巾   2011年11月08日(火) 20時11分30秒公開   ID:p74BzNnFnmA
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その翌日の放課後、4人の男子生徒は教室に集って、鶴を折っていた。誰も、何も喋らない。
同じ折り鶴でも、それぞれが少しずつ違う。
例えば、山崎や斎藤は形が綺麗に整った折り鶴。沖田は少し雑だがどこか温もりを感じさせるような鶴。藤堂は不器用ながらも人一倍、千鶴のことを思って折ったような鶴。
それぞれの性格や思いが表れているように思われる。
彼らが黙々と鶴を折り続けていた時、ガラリ、と教室の引き戸の音がして、教師である原田左之助が入ってきた。彼は千鶴の担任で保健体育の教師である。
「何やってんだお前ら、こんなとこで」
原田は訝しげに4人の男子生徒を見つめる。彼が不審に思うのも無理は無い。ひたすら鶴を折る男子生徒ははたから見ると不思議な光景だろう。
「何って鶴折ってるだけじゃん。今忙しいから用があるなら後にしてくんない?」
藤堂は鶴を折りながらそっけなく原田に返した。
「それはわかるけどよ、何で鶴なんか折ってんだ?しかもこんなにたくさん」
原田は三十羽くらいの鶴が山積みされている机を見て訊ねた。
「千鶴の見舞いに持ってくんだよ。千羽鶴を」
「平助お前、彼女に来るな、とか会いたくない、とか言われなかったのか?」
「来るなとは言われたけどよ……あいつ、何か隠してるみたいでさ。心配なんだ。だから、あいつには悪いかもしれないけど、見舞いに行くって決めたんだ」
それを聞いた原田は大きなため息をついてそうか、と呟いて続けた。
「俺も彼女から連絡を貰ったけど、お前と似たようなこと言われちまってな。俺だって彼女を見舞ってやりてえ。彼女は俺のクラスの一員だからな。お前ら、俺も手伝ってもいいか?人手は多いほうがいいだろ?」
予想外の助っ人に鶴を折っていた一同は手を止め、一斉に原田を見た。今ここで起こったことを再確認するような目で。
「ありがとな、左之さん。助かるよ」
藤堂は嬉しそうに笑い、原田に数枚の千代紙を渡した。

鶴を折り続けてから一時間ほど経った頃、廊下からコツコツと苛立たしげな足音が聞こえた。教室の前でその音は止み、引き戸が乱暴に開かれた。
「てめえらこんなとこにいたのか……。部活にも来ずに何をしてやがるのかと思えば……」
「…すみません、土方先生」
斎藤と山崎は突然目の前に現れた教師に謝った。
「一君、山崎君、謝らなくてもいいんじゃないの?これにはちゃんとした理由わけがあるんだから」
「理由…だと?」
沖田の言葉に土方は眉をひそめる。
「入院してる千鶴ちゃんに贈るお見舞いの千羽鶴なんです。山崎君が提案したんですけど、面倒臭いんですよね」
「本心ですか?沖田さん」
不機嫌そうに山崎は訊ねる。
「やだなあ。冗談だよ冗談」
「…冗談に聞こえる冗談を言え」
犬猿の仲である二人の仲裁に斎藤が入る。
「…てな訳で鶴を折ってんだ。千羽折るのって大変だろ?俺も手伝ってんだ。あんたもどうだ、土方さん」
完成した鶴を原田はひらひらと土方に見せつけるように振った。
「一人の生徒に深入りするのはよくねぇだろ。俺は折らねぇ」
「そうなんですか。見損ないました、土方さん。あなたって冷徹な人なんですね。千鶴ちゃん、かわいそうだなあ。土方さんに鶴を折って欲しかった、とか言って泣いちゃうかもしれませんよ。土方さんがそれでいいなら僕は構いませんけど」
意地悪そうに沖田は笑う。土方は深いため息をついた。
「…わかったよ!手伝えばいいんだろ?手伝えば」
半ば怒り気味に土方は千代紙を手に取った。


⇒To Be Continued...

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