Dragon Killer PAGE1:化ケ物新隊員、ココニ有リ
作者: ちびハチ公   2012年05月27日(日) 07時49分54秒公開   ID:x8n57DsTGZg
新隊員の悲鳴が上がる時期がやってきた、筈だった。しかし今年は、教官達が悲鳴をあげているらしい。
 

 「手塚ぁ、聞いた?何かとんでもないことになってるらしいわよ、今年の教育隊」
郁が食堂の定食を口に入れながら向かいの手塚に言った。
「俺も噂で聞いた。何か、女子の防衛員志望の隊員でお前を超える化け物が出た、って話だ」
「…は?」
手塚の言葉に郁が目をぱちくりとさせる。
 「噂では、男子混ぜたハイポートで一位とって、かつ格闘技訓練では教官達まで潰したらしい。そういえば、堂上一正がその隊員の相手になる為に教育隊の格闘技訓練に呼ばれたらしい」
「篤さんが…?」
堂上といえば、格闘技はかなり得意なクチだった筈だ。その堂上が呼ばれ、しかも一人の新隊員と組むために呼ばれているこの状況は「異常」を通り越している。
 「お前らどうした。二人して蒼い顔して」
郁の頭上から声が降ってきた。そこにいたのは、堂上と小牧だ。
 「もしかして、噂の新隊員の話?」
小牧が手塚の隣に座り、二人に尋ねる。
「はい。ハイポートで一位取ったって話と、格闘技訓練で教官達まで潰したって話」
「それだけじゃないよね、堂上」
やんわりと笑いながら小牧が堂上に振る。話を振られた堂上は眉間に皺を寄せて小牧を見たが、味噌汁をすすってから口を開いた。
 「正直言って、郁を超えてるどころじゃない。俺としては、あいつがまともな人間なのかを疑いたくなる」
そう告げた堂上の声は疲れ切っている。
「その発言、彼女が聞いたら相当傷つくと思うよ」
「まともな人間なのかを疑うって…」
郁が小さく呟くと、小牧がクスクスと笑った。
 「堂上、その新隊員に投げられかけたから。余計疑いたくなるんだと思うよ」
「…え?」
郁と手塚が堂上の方を向く。二人に見つめられた堂上は眉間に皺を寄せて定食を口に入れていた。
 「篤さんが投げられかけたって…信じられない」
「見てた俺らもびっくりしたよ、あれは。その様子から誰かがあだ名つけてたな。確か…りゅう…」
 
 「龍殺し宮元、です」

 手塚と郁が聞き慣れない声は手塚の背後から聞こえてきた。その場所にいたのは、満面の笑みを浮かべた新隊員だった。訓練服の胸ポケットについてるのは、二等図書士の階級章だ。
 「あ、堂上三正と手塚光三正とは『初めまして』ですね。私、宮元良って言います。今後何かの形でお世話になる事があると思いますので、その時はよろしくお願いします」
宮元、と名乗った新隊員はそれだけ告げると食堂の奥の席へと去っていった。
 「龍殺しって…」
郁は宮元の去った方を見つめながら身震いさせた。
 この瞬間、『龍殺し』は『クマ殺し』の二人を超えたのだった。
■作者からのメッセージ
はい、数日前に小説ふぁんサーチに載せた小説の訂正版。
これ誰が見るのか…。誰か見てマジで。 

6/1 ぎゃああ!三人も見てくださってる!ありがとうございます!

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